寒い時期になってきました。そんな季節にはお鍋!色んなお鍋がありますが、私は鮟鱇鍋が好きです。あのぷりぷりとした身と、濃厚な肝。美味しいですよね。今日はそんな冬の味覚のアンコウついてご紹介しましょう。
どんな魚?よく知られている生態
私は詳しく調べるまで知らなかったのですが、漁業資源となるアンコウ科に属する魚は25種類もいるのだとか。そのうち日本で食されている、私たちが聞いて、「あぁ、あれね。」と思うものは二種類です。市場ではキアンコウをホンアンコウ、アンコウをクツアンコウといって区別しています。外見は似ていますが、【キアンコウ】のほうが、評価が高いです。
味も大きさも良く、水揚げ量も多いからです。
水深30m~500mの砂泥状の海底に生息しています。手足のように変形したヒレで海底を移動します。ですが、アンコウの仲間の中には深海に住むものや、表層に住むものなど様々です。捕食方法はご存知の通り、海底の砂に潜り、頭についている突起の先をひらひらさせて、それをエサだと思って近寄ってきた魚を丸のみにします。泳ぎが苦手なため、泳ぎの上手な魚を追い回しても逃げられてしまうのでこの方法になったのです。海底の砂に隠蔽型の擬態をしているので、砂とアンコウの見分けがつきにくいですね。
餌はそんなものも食べるの?
アンコウは主に小魚やプランクトンを食べていますが、種類によっては小さなサメ、スルメイカ、カレイ、蟹、ウニ、貝などを食べます。結構色んなものを食べるんですね。まぁそれもそのはず・・・口が大きいですものね。そしてさらには、海鳥を襲うこともあるのだとか!えっ、海鳥?なんでも、食べようと思って解体したアンコウから、カモメやウミガラス、さらにはペンギンまでもが出てきたという。海鳥が出てきちゃったら食欲なくなっちゃうかも…。
オスがかわいそう!!
アンコウ目はオスとメスの差があります。アンコウのメスはオスよりも早く成長し体が大きく寿命も長いです。またチョウチンアンコウはメスの体長が60cm程度なのに対してオスは4cmに満たしません。メスはオスの15倍!?私が身長160cmなので、パートナーは約10cm。。。南くんの恋人逆バージョン!(知らない方ごめんなさい、胸ポケットに入るサイズです。)人間に例えて考えたらすごいですね。そしてここからがまたすごい。アンコウ目のうち、ヒレナガチョウチンアンコウ科、ミツクリエナガチョウチンアコウ科、オニアンコウ科など一部ではオスがメスに寄生します。…ん?詳しく説明していきましょう。
チョウチンアンコウのオスの数奇な物語
まず、オスは性的に成熟すると口がペンチのような形に変形し、広大かつ暗闇の深海の中でひたすらメスを探し回ります。メスが出すフェロモンを感じ近づいていき、そしてオスは同じ仲間のメスと判ると体に噛みつきます。オスは鋭い歯で噛みつき、さらにはくさびのようなもので外れないように工夫します。ここまではね、なんてったって深海でやっと出会えたパートナーですから。分かりますよ。ですがここからがすごい。オスはしばらくするとオスの口からメスの体へ融合を促進する酵素を出します。するとオスの唇とメスの皮膚が血管レベルまで融合し、メスの血管から栄養を摂るようになります。これすごくないですか!?血管レベルまでって。そして最後に悲しい結末が。
寄生したオスの衝撃のラスト〜吸収される?〜
寄生したオスは次第に退化が始まります。目は小さくなり、最後には消滅します。また内臓も失われ、精巣だけが大きくなります。この間、メスは積極的にオスを誘惑し、他のオスが噛みついて寄生が始まることもあるそうです。一匹のメスに対して、複数のオスが寄生するのです。そして、産卵のタイミングになると血液ホルモンを通じてオスに伝わり、タイミング良く産卵と放精が行われるのです。なんだかオスの身になってみるととても切ないお話しですよね。子孫を残すために、自分を犠牲にするわけですが、それを自ら行う。ただ、私たちの住む世界とは全く違いますから、真っ暗闇の中、メスと出会うことは本当に奇跡に近いことなんだと思います。それを逃すまいと、このような方法となったわけですね。メスはオスにありがとうですね。また最後にとどめを刺すようですが、産卵時期にオスのキアンコウがメスに捕食されるケースがあるそうです。…頑張れ!オスたちよ!比較的浅い海底に生息しているアンコウの仲間、カエルアンコウもいます。
水族館で見れる
アンコウの標本であれば展示している水族館はあるのですが、生きたアンコウを見ることのできる水族館は現在はありません。のとじま水族館の大きな水槽で巨大なキアンコウを飼育していました。
これは、その時のネット上の迫力ある動画です。長さが1.5m前後もある大きなキアンコウが二匹います。
まとめ
冬になると旬になるアンコウ。私の主人は漁師をやっているのですが、一度網に入った鮟鱇を持って帰ってきました。それはもう、捌くのが大変で。大きさにも驚きましたが(それでも小さめで、60cm程度)体がドゥルンドゥルンしていますから。そこでプロがやっているように、私たちも吊るし切りで捌きました。その名の通り、アンコウを吊るして捌くのです。とても難しかったのですが、なんとか捌き美味しいあんこう鍋を作りました。また胃袋はホルモン焼きのようにして、歯ごたえがあり美味しかったです。他はお鍋に入れました。あと、身の一部をから揚げにし、その日はアンコウ祭り!無駄なく食させていただきました。私たちの知る美味しいアンコウもいれば、深海にはとても切ない物語を持つアンコウたちもいて、意外と奥が深いですね。冬になるたび、私は切ない話を思い出しそうです。最後に一言。頑張れ!