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皆さんは、食べ物を食べた後に、突然お腹が痛くなったり、気分が悪くなったり、あるいは熱が出たり、そんな経験はありませんか?

もしかするとその症状は、食中毒による症状かもしれません。

食中毒でよく聞く症状は、腹痛や下痢、発熱などの風邪に似た症状で、軽視されがちです。

ですが!

実は食中毒の症状の中には、身体が麻痺したり、意識が混濁したり、数か月から一年近く入院することになったり、最悪の場合は死に至ります

また、食中毒の原因となる食べ物もさまざまです。条件が悪くなると、ほとんどすべての食べ物で食中毒になる危険があります。

僕も、大学の講義や調理師になるための学校の授業で食中毒について勉強した時に、「食中毒にはこんなにも多くの種類と、原因があるのか!」と驚きました。

そして、そんな中でも、毎年毎シーズン食中毒で騒がれている食材があるのです。

それが、「牡蠣」です。

日本では旬が異なる2種類の牡蠣「イワガキ」と「マガキ」が主に食されていますが、そのどちらも、とても怖い食中毒の原因になり得ます。→2種類の牡蠣、イワガキとマガキの違いとは!?

また、その牡蠣を食べることによって引き起こされる食中毒の種類や症状もさまざまで、軽い症状の場合は、その症状が食中毒だと気が付かない可能性もあります。

さらに、牡蠣による食中毒の中には、対応を誤れば他人に感染し、二次的な被害に繋がる恐れもあるのです

そこで今回は、牡蠣によって引き起こされる可能性がある食中毒、食あたりとその症状、対処の仕方などを紹介したいと思います。

そもそも、食中毒って何?

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食中毒は、僕たち人間にとって有害な物質を含む食べ物や飲み物を、口から摂取したことによって引き起こされる症状の総称です。

有害な物質は、飲食物の中で増えた微生物だったり、その食材が元々持っている化学物質(毒素)だったり、或いは誤ってその飲食物に混入した異物だったりとさまざまです。

飲食物は大丈夫でも、その時に使ったお皿や箸などの食器に有害な物が付着していて、それが原因になることもよくあります。

そんな食中毒は、原因になる要因や物質によって6つに分類されています。

  • 細菌性食中毒
  • ウイルス性食中毒
  • 化学性食中毒
  • 自然毒食中毒
  • 寄生虫性食中毒
  • その他(カビ毒による食中毒)

今回ターゲットにした牡蠣は、このなかの「細菌性食中毒」、「ウイルス性食中毒」、「自然毒食中毒」で主な原因となっています。

当たる!?牡蠣によって引き起こされる食中毒とは?

牡蠣は、その一つの食材でいろいろな食中毒の危険性を持った、ちょっとリスクの高い食材かもしれません。(しっかりと調理すればあるかなり危険は減ります)

牡蠣を食べる事によって引き起こされる主な食中毒は以下の4つが多いです。

細菌性食中毒

1・「腸炎ビブリオ」による食中毒
2・「大腸菌」による食中毒

ウイルス性食中毒

3・「ノロウイルス」による食中毒

自然毒食中毒

4・「貝毒」による食中毒

この中で、最近は細菌性による食中毒は、生産業者の努力によってかなり減ってきました

それは、牡蠣を採取した後に、殺菌されたキレイな海水に数日ほど入れておくことで、貝の表面や貝の内部に取り込まれた細菌を洗い流し、ほとんど無菌な状態にできるようになったからです。

しかしそれでも完全という訳ではないので、注意が必要な事には変わりないです。

ではどんな症状が出るのか?次で解説!

牡蠣のよる食中毒の症状と予防法

牡蠣による食中毒の症状はさまざま

しかし、多くの場合その食中毒は予防できるのです。

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腸炎ビブリオ(細菌性食中毒)の症状と原因

腸炎ビブリオは海水中に生息する細菌で、実は牡蠣以外にも海産性の食材ならばすべて持っている可能性のある細菌です。この細菌は水温が15℃以下では活動が鈍く、増えることもありません。

しかし、水温が高くなると元気になり、水温が20度近くになると10分間に1回という早いペースで分裂してしまいます。そのため、海水温が上がる夏場に被害が増える細菌です。

なので牡蠣の場合は、初夏から夏にシーズンとなるイワガキを食べる場合に注意が必要となります

腸炎ビブリオ食中毒の潜伏期間6~12時間ほどで、その後激しい腹痛や下痢、嘔吐、発熱といった症状がでます。

2~3日で回復することがほとんどですが、免疫力の低い幼児や高齢者は、毒素によって重症化することもあるので、食中毒が判明した時はすぐに医療機関で診てもらいましょう。

予防法は?

しかし、この細菌は加熱によって死滅させることができ、70℃以上で1分間加熱すれば安全に食べることができます。

でも、せっかくのイワガキ、生で食べたい!という人も多いでしょう。大丈夫です!

腸炎ビブリオは塩分が3%以上の海水を好み、塩分の低い海水では活発にならず、真水になると死んでしまいます。

なので、イワガキを生で食べる場合は必ず!真水でよく洗ってから食べて下さい。

ちなみに、冬に旬となるマガキでも腸炎ビブリオの危険性はあるのですが、一般的に流通するマガキは殻から取り出されて、むき身の状態でパックに詰められているものが多いですよね。

あのパックの中の牡蠣と一緒に充填されている海水は、塩分が2%ほどに抑えられ、腸炎ビブリオが活発化しないようにされています。

真水ではダメなのか?と思う人もいるかと思いますが、真水では牡蠣の浸透圧調節機構によって、うま味の素であるアミノ酸が流出してしまい、美味しさ半減となってしまうのです。

つまり、生産者は美味しさを保ったまま腸炎ビブリオに対する安全性も考慮する努力をしてくれている訳ですね。

大腸菌(細菌性食中毒)の症状と原因

大腸菌は環境中に広く存在し、菌の表面にある抗原の形態によって数多くの種類に分類されます。牡蠣に付着している大腸菌は、37度と人の体内に近い温度でかなり活発化し、30分に1回の速さで分裂・増殖します。

しかし、牡蠣の生産者によって、牡蠣を育成している海域の細菌検査や、牡蠣自体の検査もしっかりと行われています。そして、上述したように最近では紫外線によって殺菌されたキレイな海水によって牡蠣の表面や内部まで洗い流されているため、大腸菌による食中毒は減少しています

ですが、天然の牡蠣を自分で採収して食べる場合は気を付けましょう!大腸菌は加熱に弱いため、75℃以上で1分間加熱すればほとんど死滅します。

次は危険なノロウイルスについて!

ノロウイルス(ウイルス性食中毒)の原因

近年、牡蠣の食中毒原因として最も騒がれている原因が、このノロウイルスです。

下水施設から海に流出したノロウイルスによって海が汚染され、その汚染海域で育った牡蠣の中腸腺にノロウイルスが蓄積されます。

ノロウイルスは海水温が10℃以下になると活発化するため、特に、冬にシーズンとなるマガキが汚染されることが多いです。
そして、その汚染された牡蠣を加熱処理せずに食べることで、食中毒となるのです

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予防法は?

なので、このノロウイルスによる食中毒を防ぐ方法としてまず、ノロウイルスに汚染されていないキレイな海域で育った牡蠣を選ぶことです。

一般的に、加熱調理用の牡蠣と、生食用の牡蠣の違いは、キレイな環境の海域で育てられたか否かだと言われています。

しかし、市場に並ぶ牡蠣が育つ海域はすべて水質検査が行われてはいますが、ノロウイルスの数に対しての規制はまだ無く、大腸菌群がその水質の指標になっているのが現状です。

したがって、「生食用」の表示は必ずしもウイルスの危険が無いことを保証する訳ではないので、キレイな海で育った生食用の牡蠣だからといって完全に安全な訳ではありません。

恐怖のノロウイルスの症状は?

ノロウイルスの感染力・増殖力は恐ろしいもので、10~100個程度のウイルスが体内に入っただけで感染者になる可能性があります

そして、感染してから潜伏期間を終えて症状が出始める頃、感染者の排泄物や吐瀉物には、1万~10億個ものウイルスが検出されます。

また、ノロウイルスは酸やアルコールに強いので、レモンをかければ大丈夫とか、ワインを飲みながら食べているから大丈夫!といったことはないので注意しましょう。

冬のマガキを安全に食べるには、加熱調理が一番確実ですね。ノロウイルスは85℃以上1分間以上の加熱で感染力がなくなるので、しっかりと中心部まで加熱して食べる事をお勧めします

ノロウイルスの症状には個人差がありますが、24~48時間の潜伏期間の後、感染性胃腸炎の症状である吐き気や不快感、嘔吐、そして下痢を起します。発熱や呼吸器症状を伴うことがあり、重症化すると脱水症状を引き起こすことがあります。

ここで怖いのは、ノロウイルスは二次感染の可能性があるということです。

ノロウイルスに感染した人の排泄物や吐瀉物からウイルスはさまざまな物に付着し、調理器具、生活用具、その他接触したものすべてを介して感染したり、感染者の飛沫による空気感染によって、牡蠣を食べていない人でも食中毒症状を発症する可能性があります。

感染者の症状が治まっても、1週間から1か月間ウイルスを便中に排出することがあるので注意が必要です。

そして、食中毒に感染しているにも関わらず症状が現れない人がいるのでさらに注意が必要です。ノロウイルスによる食中毒の症状が出ないために、本人の気が付かない内にウイルスによる汚染を拡大させ、被害を大きくすることもあります。

これらの理由によって、ノロウイルスによる食中毒の被害が出ると、爆発的にその患者が増えることがしばしばあります。

なので、自分に症状が現れていなくても、自分の身の回りや、接触のあった人がノロウイルスに感染したことが判明した場合は、医療機関で検査することを勧めたいです

余談

ちなみに余談ですが、香草でお馴染みの「オレガノ」(和名:ハナハッカ)に含まれる「カルバクロール」という物質がノロウイルスに対して有効な成分ではないかという研究結果が報告されています。

今はまだ研究段階ですが、いずれはノロウイルスの食中毒に対する特効薬のようなものができるかもしれませんね!

貝毒(自然毒食中毒)の原因

貝毒は牡蠣以外の他の二枚貝にも共通する食中毒で、貝がエサとする海洋性プランクトンが持つ毒素を、貝が体内に蓄積し、その貝を人が食べることで症状が現れます

貝毒による食中毒は、現れる症状によって、「下痢性貝毒」、「麻痺性貝毒」、「神経性貝毒」、「記憶喪失性貝毒」に分類されますが、その中でも牡蠣が原因で起こるのは下痢性、麻痺性、神経性の3つです。

下痢性貝毒は、牡蠣が有毒渦鞭毛藻類の毒素を中腸腺に蓄積させ、それを食べた人間の消化器系に影響する食中毒で、吐き気、嘔吐、下痢を引き起こしますが、現在のところ死亡例は報告されていないようですね。

麻痺性貝毒も同様に、有毒渦鞭毛藻類などによって毒化した牡蠣を食べる事が原因となります。

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症状は?

軽い症状の場合は手足の痺れや目眩による歩行困難となり、24~48時間で回復しますが、症状が重くなると全身麻痺や呼吸困難となり、最悪の場合は意識がなくなり、死に至る場合もあります。治療薬がない為、対症療法として胃の洗浄や人工呼吸を行います。

神経性貝毒も、上の2つと同じように有毒な渦鞭毛藻類を取り込むことで牡蠣が毒化し、それを食べることで中毒症状が起こります。

毒素が神経細胞のナトリウムチャネルと結合し、正常な働きを阻害することで、食べてから数時間後に口内がヒリヒリしたり、顔が紅潮し、運動失調に繋がりますが、2~3日で回復するようです。

これらの毒素はいずれも熱に強いため、加熱調理による分解や変性はしません。また酸やアルコール類と一緒に食べても毒は無効化されないので注意が必要です。

ですが、毒化した牡蠣でも、生きている段階でキレイな海水に入れておけば、蓄積された毒は徐々に減っていき、数日で無毒な状態になります。

一般的にお店で購入した牡蠣は、生産者によって定期的に検査しているので、よっぽど運が悪くない限り大丈夫だと思うのですが、自分で採取した天然の牡蠣は危険性がはっきりしていないので、採取した海域の貝毒発生状況を各自で確認した上で食べて下さい!

まとめ

それでは最後に、牡蠣の食中毒についてまとめると、

  • 牡蠣を食べることで起きる食中毒は、腸炎ビブリオ、大腸菌、ノロウイルス、貝毒が原因で発生する
  • 腸炎ビブリオは加熱(70℃以上で1分以上)と真水での洗浄によって予防できる
  • 殺菌海水での洗浄によって大腸菌による被害はかなり抑えられているが、念のため加熱調理(75℃以上で1分以上)が望ましい
  • ノロウイルスによる食中毒の発生は冬に多く、ノロウイルスの強力な感染力と増殖力によって被害が拡大しやすい
  • ノロウイルスの感染者から二次的に感染する場合があるので、自身や身の回りの人の感染が判明したら適格で迅速な対応が必要
  • 貝毒は牡蠣が有毒なプランクトンを取り込む事が原因となり、これらの毒素は加熱しても無くならないため注意が必要

牡蠣という食材は、すごく栄養価が高く、健康的にも美容的にも優れた食材で世界中が注目する貝なのですが、食中毒の危険性はどこの国でも同じなので、海外で牡蠣を食べる時も注意して下さい。

また、食中毒ではないが、牡蠣を食べる事によって症状が出る「牡蠣アレルギー」というものもあります。

牡蠣の筋肉に含まれるタンパク質(トロポミオシン)がアレルゲンとなる場合と、牡蠣が体内に溜め込んだ金属物質(ニッケル、亜鉛、銅)がアレルゲンとなる場合があります。

アレルギー症状は食中毒の症状と似ている部分があるため、間違える人がいるかもしれないですが、食中毒とアレルギーでは対応の仕方が異なり、牡蠣アレルギーも重症化すると死に至ることもあります。

したがって、もし牡蠣を食べた後に体調の悪化を感じたら、自分で判断せずに急いで医療機関に向かいましょう!!