古くからペットとして親しまれており、爬虫類の中では飼育や繁殖が比較的容易、しかも表情が豊かで可愛らしくワイルドで魅力的な動物がいます。英語ではCommon leopard geckoで、漢字では豹紋蜥蜴擬です。ヤモリの仲間です。本文では、その魅力などを紹介しつつ、飼い方もご紹介します。脱走対策も!興味があるけどなかなか踏み出せない、そんな方は是非ご一読ください。
生態
爬虫綱有鱗目トカゲモドキ科です。トカゲとヤモリの両方の性質をもっています。トカゲと同じで目にまぶたがありますが、しっぽは違い、太くふくらんでいるため、トカゲモドキに分類されているのです。ふくらんだしっぽには栄養が蓄えられており、エサを食べなくてもしばらくは体がもちます。
生息地。
アフガニスタン、パキスタン、インドなどの南アジアを中心とした砂漠地帯に分布していることもあり、水切れにも強いです。
多様な品種(モルフ)がある。
レオパードゲッコーの原種は黄色い体に黒い斑点模様の体が特徴ですが、ほかにも様々な体色の品種が存在します。爬虫類の様々な品種は人の手による品種改良で生み出されたもので、モルフとも呼ばれます。原種に最も近い体色を持つのが「ハイイエロー」と呼ばれるモルフです。野生種の中から黄色みが強い個体を交配してできたのがハイイエローです。モルフはハイイエローを元にして、黒い色素が抜けた「アルビノ」、黄色が減退した「マックスノー」、赤みがかった「タンジェリン」、赤い目を持ち体色が薄い「ラプター」、黒い斑点がなく体全体が白い「ブリザード」など、様々なに分かれます。レオパは爬虫類の中でもモルフの数が多く、100種類以上存在します。お迎えの際は好みのモルフを選ぶのがいいかと思いますが、珍しいモルフは販売価格が高く、また、原種よりも体が弱い場合もあるそうなので注意が必要です。
寿命
寿命は飼育下では平均して10~15年です。しかし、エサを与える量を抑えたり、ケージを広くして運動量を増やすなどの工夫を凝らすことでレオパの寿命をさらに伸ばすことも可能です。野生での寿命は25年、場合によっては30年を超える生体もいます。
大きさ
成体でも全長は20~25cm。生後1年ほどで全長20cm程度まで成長します。それ以降はエサを多めに与えても体が太くふっくらしてくる程度で、全長が伸びることは特にありません。小柄なため、ケージの掃除の際や緊急時なども扱いやすいです。プラスチックケースに空気穴をあけておけば荷物と一緒に移動することだってできます。
準備やペットとしての飼育方法について
ここまででヒョウモントカゲモドキの生態やモルフについて述べましたが、わかってきたでしょうか?ここからは実際に飼育したい、という方のためにお迎え前に揃えておくべき飼育用品についてご説明します。飼育ケージ、床材、シェルター、水入れ、パネルヒーターなどの保温器具や温湿度計があれば飼育環境を整えることができます。また、これらのものは1万円~2万円ほどあれば一通りそろえることができます。以下で順番にご説明します。
ケージ
飼育ケージは鑑賞に適したガラス製のもの、軽くて扱いやすいアクリル製のもの、天井がスライド式のフタになっているもの、給餌用のドアがついたものなど様々なタイプのものがあります。ケージ選びの際に気を付けるべきは広さです。レオパは地表性の動物なので高さはあまり必要がありませんが、ケージ内に温度勾配をつけなければいけないため、広さはある程度あった方がいいでしょう。また、適度な運動を促し健康を保つためにもある程度広いケージを選ぶべきです。大きさは一面30cmほどあれば問題ありません。
床材
ケージの床面にしくものを床材と言います。砂、ペットシート、ソイルと呼ばれる粒上の土など床材にも色々な種類があります。床材によって見た目はもちろんのこと、保湿性やメンテナンス性が異なります。誤飲の恐れがなく安全なのはペットシート。砂やソイルは見た目がおしゃれであり、ものによっては保湿や消臭効果が見込めるものもあります。床材は好きなものを選びつつ、飼育する中で変更してみてもいいです。
シェルター
レオパが中で休むための隠れ家のようなものです。これをケージ内に置くことで、安心して生体が暮らせるようになります。爬虫類飼育で一般的なのはウェットシェルターというシェルターです。上部にくぼみがあり、水をそそぐことでシェルター内を保湿することもできます。湿度にはあまり神経質に気を配る必要はないのですが、脱皮する際に湿度が足らないと脱皮不全を起こし、体が壊死する危険性があるためウェットシェルターで湿度を保っていると安心です。また、シェルターを選ぶ際は大きさに気を付けましょう。レオパが丸まった時にちょうどおさまる程度の大きさがベストです。幼体のレオパをお迎えした時は、成長にあわせてシェルターを買い替えるといいでしょう。
水入れ
水分補給のための水入れです。ヘビの場合は水浴びできるように大きな水入れを選んであげた方がいいのですが、レオパの場合小さな水入れでも問題ありません。ある程度重さがあるものを選び、生体が水入れをひっくり返さないようにしましょう。また、水入れはこまめに洗い、中の水を綺麗な状態に保つのがいいでしょう。
保温器具
レオパを飼育する際の適温は20~30℃だと言われています。保温器具を設置することでケージ内を生体が過ごしやすい温度に保ちましょう。
保温器具も色々なものがありますが、パネルヒーターが使いやすいかと思います。ケージの下に敷き、底面をあたためるものです。この他、ケージ内の天井部分に設置可能な暖突という保温器具も有名です。保温器具を選ぶ際の注意点はケージの広さの半分程度の大きさのものを選ぶことです。ケージの底面全体を温めてしまうと生体が低温やけどをする危険性があるからです。保温器具がある部分とない部分を設け、ケージの中に温度差を作ることで生体が好きな場所を選べるようにします。また、保温器具はシェルターの位置からも離して設置し、シェルター内でレオパが休んでいる時に低温やけどにならないように気を付けましょう。
温度計と湿度計
爬虫類の飼育には温度管理、湿度管理が重要になってくるので温度計や湿度計が必要になってきます。温度計と湿度計が一体化された温湿度計が便利でしょう。なお、レオパにとっての適正温度は20~30℃、適正湿度は60〜70%とされています。温湿度計は保温器具から離れたケージの隅に置き、一定以上温度が保たれていることを確認しましょう。以上が準備に必要な用品とその注意事項です。これらのものはインターネットでも購入することができますが、初めての際は現物を確認し、できればペットショップの店員やブリーダーなど爬虫類飼育の経験がある人の話を聞きながら選ぶ方がいいかと思います。なれてきたら、用品を変更してみたり、ケージ内のレイアウトを工夫するのも一興です。
食事、餌
ペットをお世話する中で最も楽しい時間の一つと言えるのが給餌する時間ではないでしょうか。ここではレオパの食事についてご説明します。食事は基本的に昆虫食です。昆虫に栄養補助のためのサプリをかけて食べさせたり、昆虫食爬虫類専用の人工フードを与えたりします。昆虫か人工フードか、どちらを好むかと言うと、圧倒的に昆虫の方です。食いつきが違います。ヨーロッパイエコオロギやフタホシコオロギなど、コオロギがレオパのエサとしてはメジャーです。ミルワームやシルクワーム、デビュアやレッドローチなどの虫も食べます。生きた虫だけでなく、冷蔵保存用の虫も売っているので与えやすいものを選ぶのがいいかもしれません。レオパが好む昆虫ですが、与えて育てる場合には注意すべき点があります。それは栄養失調です。ただ昆虫だけを与えていた場合、ビタミンやカルシウムが不足してしまい病気になる恐れがあるのです。栄養を補強するための粉状の爬虫類専用サプリが売っているので、それを昆虫にふりかけてから与えるといいでしょう。昆虫に比べて栄養が優れているのが人工フードです。必要な栄養が配合されているためサプリで補強する必要がありません。フードになれている生体ならフードを中心に給餌した方が栄養不足の心配が少なくなり安心です。フード中心の食生活を送らせている場合、昆虫はおやつやご褒美として、または食欲不振を回復させるごはんとして与えるのがいいです。これらのエサを成長前の幼体は毎日食べるだけ、成長後の成体は2~3日与えましょう。エサを食べすぎることで肥満になり寿命が縮まる危険があるため、エサの頻度を抑えることが長生きにつながります。
匂い
ペットを飼育する前に気になるのが臭いのことだと思いますが、レオパードゲッコー自体はあまり臭いません。ほとんど無臭です。臭いがあるのはフンや尿酸の塊といった排泄物です。ケージのフタをあけた時にくさいな、と思う程度で、これも乾燥してしまえば臭いは弱くなります。部屋中がくさくなるほど臭うわけではありません。ただ、排泄物を放置して臭いがケージに染みついてしまう場合もあります。そこまでになってしまうと部屋の臭いまでくさくなってしまい不衛生です。フンはその都度取り除き、ケージ内を清潔に保つようにします。床材に砂やソイルを使っている場合はティッシュで取り除けば大丈夫。尿酸も液状ではなく固形で出てくるため、フンと同じようにティッシュで取り除くことができます。フンをした後、少し時間をおいて乾燥してから取り除く方がやりやすいです。また、爬虫類用の除菌・消臭グッズも販売されています。これらを使えば臭い対策は大丈夫です。以下で役立つ除菌・消臭グッズをご紹介するので参考になさってください。
①爬虫類用消臭スプレー
臭い対策には消臭スプレーが効果的です。アルコール類が入っているものは生体によくないのでアルコール未使用のものを選んで使いましょう。爬虫類用の消臭スプレーが販売されているのでそれが便利です。爬虫類の体に優しく、ケージ内を掃除した後にふきかけるだけで臭いがだいぶ抑えられます。中でも「エキゾジア」という商品は生体の体にかかっても安心の除菌・消臭スプレーとしてオススメです。除菌後すぐに水に戻るため生体に悪い影響がないどころか、消毒効果もあり、皮膚病の対策にも使えます。爬虫類専門店のwebサイトで通販ができたり、爬虫類イベントで販売されていたりしますので気になれば購入してみてください。
②置き型消臭剤
ケージの近くに置くだけで消臭効果が期待できる置き型消臭剤。簡単に使えて便利だと思います。ペット用の消臭剤がたくさん売られているので好みのものを探してみましょう。「DEO PET GEL」という商品は無香料の上、抗菌作用もありオススメです。
③ソイルなど消臭効果のある床材
ペットシーツを利用している場合はフンをする度に新しいシーツに入れ替えることになりますが、砂やソイルを床材にしている場合でも3か月に1度程度は床材の全入れ替えをしましょう。
なつく?人になれやすくハンドリングできる
爬虫類は犬や猫とちがい人にはなつかないと言われますが、レオパはそんな爬虫類の中でも比較的人になれやすい動物です。性格には個体差がありますが基本的に人をあまり怖がることなく、ハンドリングしてさわることも簡単にできます。落ち着いている時は頭をなでさせてくれたり、指をなめてくれる時もあります。この時のレオパの仕草は大変愛くるしく癒されます。また、皮膚や体がやわらかく、さわっていると和みます。しかし、ハンドリングをしすぎてストレスをためないよう注意も必要です。人になれやすいとは言っても、さわられることが好きというわけではなく、過度なコミュニケーションは大きなストレスになります。あまりしつこくさわっていると怒って噛んでくることもあります。日頃のお世話や緊急時の場合に備え、適度にハンドリングを行いさわられることになれさせておく必要はありますが、いきすぎないように注意しましょう。
性格。
おとなしく温和な個体が多く、人をあまり怖がらず、なれやすい動物です。ハンドリングも比較的簡単にできます。このようにレオパは丈夫で扱いやすく、また、爬虫類の中でも比較的安価で販売されているため、爬虫類の中でも飼育初心者向きの動物とされているのです。
脱走には注意したい
温度や食事以外でも気を付けることがあります。筆者が特に注意喚起したいのはレオパの脱走についてです。レオパはあまり動きが早くないと言われていますが、成長しきっていない幼体の場合は体が小さく軽いため意外とすばしっこく、油断するとすぐにケージから脱走してしまいます。また、隙間に隠れてしまう習性があるため、脱走してしまうとどこにいったかわからなくなり、なかなか見つけることができなくなります。筆者はレオパをお迎えして3か月経つくらいまでに3回脱走されました。脱走を防ぐために、ケージのフタを閉め忘れないよう気を付けること、ハンドリングの時うっかり手放さないよう注意することが大事です。ケージの外に出した時は特に気を付け、絶対に目を離さないようにしましょう。万が一脱走された場合は慌てずに部屋の中を探しましょう。デスクの裏やカバンの中、折りたたんだ服の中など、意外なところに入り込んでいる場合があるので部屋中隅々を探すことをおすすめします。また、先ほど述べたようにレオパは体が丈夫で、数日はエサや水分がなくても死なないため、そこまで慌てなくても大丈夫です。脱走後数日してひょっこり出てきた、という話も聞くので落ち着いて探しましょう。
魅力
レオパの魅力について、筆者の飼育経験も交えてお伝えできればと思います。
意外と表情豊か。
一見、あまり表情が変わらないようにも見えますが、シェルターから顔をのぞかせきょとんとしている時、ヒーターがあたるあたたかい砂の上でまぶたをとじてうとうと寝ている時、ぺろぺろと舌なめずりをしている時、エサを目の前にして真剣な顔になった時など、飼育してみるとレオパの色々な表情を見ることができます。キュートだったり、ワイルドだったり、面白かったり綺麗だったり。表情と仕草をただながめているだけですごく楽しい気持ちになれます。
ユニークな模様。
特徴的な模様の面白さもレオパの魅力だと言えます。モルフによって色や模様がちがうということは先ほど述べましたが、モルフだけでなく個体によっても色合いや模様の出方がちがいます。ペットショップや爬虫類専門店で好みの模様を探してみるのも楽しいかと思います。ちなみに筆者が飼っているレオパのモルフはハイイエローですが、黄色と黒の鮮やかなコントラストがとても綺麗でかっこいいです。
動物園で見れる?
京都市動物園にいるヒョウモントカゲモドキが有名です。他にも体感型動物園izoo(イズー)を始めとして、福岡市動物園や札幌市円山動物園、長崎バイオパークなどで見ることができます。
まとめ
ヒョウモントカゲモドキについてあれこれと説明をしてきましたが、魅力が少しでも伝わったでしょうか?モルフもたくさんあり、表情が豊かで、模様もユニークでしたね。