深海には、その存在は知られていてもまだ謎の多い生物がたくさんいる。深海魚のラブカ(英語ではFrilled shark)も、 生体数がそれほど少ないわけではなさそうだが、その生態まだ殆ど明らかになっていない。 一部の深海魚ファンに知られている程度だったが、近頃一般の知名度も急上昇の様なので乗り遅れない様にしようと思う。
生態と特徴10のポイント

ラブカは、カグラザメ目ラブカ科に分類されるサメの一種だが、見た目にはサメっぽいところはあまりなく、「サメだよ。」と自己紹介されても疑うレベルである。これから生態などについて調べていきます。
1.ウナギザメとも呼ばれる。大きさは?

ウナギに似ているので日本ではウナギザメと呼ばれる事もある。大きさはウナギより大分大きく、体長100~150cmほど。5号のラグビーボールを横に二個並べた長さと同じくらいです。因みに本名の「ラブカ」は「羅紗(のような手触り)+フカ(サメのこと)」でラブカなんだそうだ。怪獣っぽいから適当にそれっぽくつけたわけではなかった。
2.生きた化石

古生代の3億6千年前のサメの化石に似た原始的な特徴を持っているため「生きた化石」といわれる。なるほど。一応サメなわけだ。また、ラブカそのものの化石は白亜紀後期の8000万年前から5000万年前の地層からも見つかっている。
3.日本では割と浅めのところが生息地

大西洋、太平洋、インド洋の各地に生息する深海魚で、水深500〜1000mの深さにいる。日本では相模湾や駿河湾にいるが、何故か水深100~200m浅めところに出てくることが多く、漁業の網にかかることも多い。

駿河湾では1年に50尾ほど水揚げされた。ただし、食用にならず、歯が鋭い為に漁師には嫌われ、網にかかるとすぐに海に放される。釣り上げたラブカを持とうとすると体をくねらせ噛みついてくる。
4.動きはゆっくり
尾ビレに向かって先細りした体型で、他のサメの様に大きな背びれがついておらず、体をくねくねさせながらゆっくり泳ぐ。泳ぐ姿はやっぱりウナギっぽい。
5.お洒落なフリルがついている

エラがピンク色のフリルがついた様に見えるため、英名はフリルド・シャークという。しかも普通のサメよりエラが1つ多く、6つあって、オシャレ度さらにアップ。
6.鋭い歯が約300本ある

根元から3本のトゲが出た様な小さな歯が300本くらい綺麗に並び、魚は逃さない仕様になっている。歯というより、棘がたくさん出ている様な感じに見える。
7.大きさ。脳みそが小さめな分、口が大きい
ラブカは大きいものになると、オスは体長165cm、メスは体長196cmです。メスのほうが大きいんですね。頭部の殆どが口と言っても過言ではないくらい大きい。他のサメの様な長い吻(鼻先のところ)がなく、顔が平らなので余計に口が大きく見える。(実際大きいのだが。)で、その分脳みそは小さいタイプ。
8.かわいい部類に入っている
エメラルドグリーンの丸くて大きな目が離れてついてる。瞬膜は無い。口を開けると口角が上がっているようにも見え、愛嬌がある。そんな顔なのにまさかのウナギ体型なところもかわいげがある。ぬいぐるみっぽい顔なので、ぬいぐるみにしたらかわいいだろうと思ったら沼津水族館でちゃんとぬいぐるみになっていた。

靴下にもなっています。フェリシモではラブカポーチが販売されている。
9.餌
イカやタコなどの頭足類を主に餌として捕食する。歯は沢山あるのだが、顎はそれほど強く無く、大概は丸呑みすると考えられる。魚も食べて、自分の体長の半分くらいの大きさまで丸呑みできる。小柄なサメもいけるらしい。
10.生まれるまで時間がかかる
ラブカは卵胎生である。母親の体内で卵から孵化し、40〜60cm程になってから産まれる。その間、卵黄から栄養をとっている。一度に6〜12匹産むらしい。また、東海大学海洋科学博物館での研究によると、ラブカの胎児の成長は遅く、母親の体内にいる期間は3年半ほどになると推定されている。
水族館にいる?寿命は?

2020年1月、和歌山県の勝浦の沖合の深海から、ラブカが水揚げされました。串本海中公園で展示中です。
深海の古代サメ、ラブカを搬入‼️
— 和歌山・串本海中公園 (@KushimotoMP) January 16, 2020
体長1.2mほどのオスで、勝浦沖・水深550mの深海から引き上げられました。水族館内の砂場水槽にて展示中です。
残念ながら長くはもたないと思います。#ラブカ pic.twitter.com/SMDpT7yHQ9
ラブカが水族館の水槽の中を泳いでいる動画です。貴重です。ラブカは深海魚であり、生態もわからない部分が多い為、底引き網に掛かった個体が稀に、水族館で飼育されていることもある。しかもいったん海上にあがると、寿命は数日です。その為、ラブカを見られる機会は極めて少ない。沼津深海水族館などでたまに展示されることもあるので、水族館の情報をこまめに見て、展示されたら急いで行けば、見られる機会があるかもしれない。ネット上の動画ならいつでも見ることができます。
また沼津港深海水族館のスタッフが食べたが、ラブカの味は特に特徴はなくあっさりしていた。標本であれば展示しているところがある。東海大学海洋科学博物館は、過去にラブカの生態調査を行っており、パネル展示もある。
大学での研究は?
先ほどの東海大学海洋科学博物館とアクアマリンふくしまが共同で「ラブカ研究プロジェクト」を推進しています。ラブカの卵の人工保育などの研究です。
ペットにできる?

ラブカは漁で偶然に網にかかった時しか入手できません。そのため、個人が観賞魚として入手するのは困難です。また、深海魚なので地上に水揚げされると、数日の寿命しかありません。個人でラブカが生活できる深海500~1000mの環境を再現した巨大な水槽を用意することも困難です。そのため、個人でラブカをペットとすることはほぼ不可能です。もし、自宅のアクアリウムにラブカがいたら、あまりの珍しさにテレビ取材も来てしまうことでしょう。
まとめ
名前からも見た目からでも何の仲間か想像がつきにくいラブカ。
- でかいウナギに見えるが、古代の特徴を持つサメで生きた化石といわれる。
- 駿河湾では結構水揚げされるがすぐ海に戻される。
- 水族館では運が良ければ見れることもある。
名前も見た目も、人気が出る要素のある愛嬌のある深海魚だった。