とてもユニークで、不思議な魅力を持つカメレオンです。ところがそれは爬虫類の中でも飼育が難しい種とされており、間違った飼育方法ではすぐに体が弱り、死んでしまうこともよくあります。ですが、初心者がまったく飼えないわけではありません。正しい知識を得て、注意深く観察し、適切にお世話をすれば長く飼うことも可能です。この記事では、入門種として知られるエボシカメレオンの寿命を延ばす飼育方法をご紹介します。これから育てようと考えている人は是非参考にしてください。
そもそもエボシカメレオンの平均寿命は何年?
エボシカメレオンの平均寿命は5~8 年だとされています。オスは平均 7 年、メスは平均 5 年と言われ、オスの方がやや長生きする傾向があります。2~3年で死んでしまう種もいるカメレオンの中ではそこそこ長寿です。しかし先述のように飼育は難しく、野生下の平均寿命まで生きることができない個体も多いと言います。比較的丈夫と言われますが、繊細で神経質な側面はあります。「飼い始めて半分以上の人は、おむかえ後半年以内に死なせてしまっている」と語るブリーダーの方もいました。
必見!長生きさせるためには?
エボシカメレオンはそんな生き物ですから、長生きさせるためには温度や湿度、給餌や給水など、様々なことに気をつけなければいけません。具体的なポイントは以下でお伝えいたします。
・長生きできそうな個体を見極めてお迎えする。
これは飼育前の段階の話ですが、長く育てるためには、個体の状態をよく観察した上でお迎えすることも必要になってきます。ただでさえ飼育が難しいとされているので、より健康な個体をお迎えした方が安心であると言えるでしょう。以下でおむかえするときのポイントをお伝えします。
1、健康状態を確認しておむかえする。
元気な個体は体の色が鮮やかであり、エサに対する反応もいいです。生き餌の昆虫が近くにやってくると興味を示します。普段の様子をお店の担当者の人に聞いて判断するのもいいでしょう。また、ある程度成長した生体をおむかえするのも一つの方法です。
2、成長した個体である。
幼体、成体など、販売されている個体の成長具合は様々です。もしあなたが飼育初心者であり、ある程度体調が安定した個体をおむかえしたい場合は成体を選んだ方がいいでしょう。これはカメレオンに限らず爬虫類全般に言えることですが、ベビーより成体の方が販売価格が高い場合が多いです。犬や猫の場合は成長するにつれ値段が安くなりますが、爬虫類の場合は逆なのです。これはなぜかと言うと、爬虫類のベビーは扱いが難しかったり、育てあげるのに手間やコストがかかったりするためです。
3、専門店でお迎えする。
爬虫類専門店、特にカメレオンを専門的に扱っているお店の個体をおむかえした方がいいでしょう。特にカメレオンはレオパードゲッコーやヘビ類などのメジャーな飼育用爬虫類に比べて取り扱い店舗が少ない種であり、ややマニアックな傾向があります。そのため、爬虫類専門店の中でもカメレオンに特化しているお店を探しておむかえするのがおすすめです。専門の経験豊富なブリーダーの方はお店でも適切に飼育している可能性が高く、おむかえ後の相談もしやすいというメリットがあります。専門店が近所にないという場合は、「ジャパンレプタイルズショー」や「ブラックアウト」などの爬虫類イベントに行き、出展ブースの中からカメレオン取扱店を探すといいと思います。大きな爬虫類イベントには全国各地からブリーダーが集まるため、カメレオンのブリーダーも問題なく見つけることができるかと思います。おむかえ後に電話やインターネットで相談に乗ってくれるお店もあるため、遠方のお店でも安心です。イベントを上手く利用して目当てのお気に入りのペットをおむかえしましょう。
・負担がかからない適切な飼育環境を用意する。
長生きさせるためには生体に負担がかからない飼育環境を整える必要があります。環境が悪いとすぐに体調が悪化し、そこから死んでしまうこともあるので要注意です。野生では高地にある湿度が高い森林に住む樹上性の爬虫類で、霧や露から水分を摂取し生きています。そうした特性や野生下の環境を意識するといいでしょう。以下ではケージなど環境の具体的な整え方について説明します。
1、飼育ケージは通気性と高さと広さを意識。
ケージ選びのポイントは高さ、広さ、通気性です。ケージの中に高低差を生んで木の上での生活を再現するために高さが、ストレスを感じさせにくい環境にするために広さが、ケージ内に空気の流れを生むために通気性が必要になるわけです。ケージの具体的な高さや広さについては諸説ありますが、幅と高さは最低でも30cm~40cm程度はあった方がいいでしょう。成長し体が大きくなった場合でも生体の体の2倍程度の幅や高さがあれば問題なく生活できます。3つ目のポイントは通気性です。霧吹きなどで保湿した後に湿気がこもらず逃げるような構造のケージを選ばなければいけません。通気性に優れているのはトリカゴやメッシュケージですが、よりオススメなのはケージ内から外部が見えにくいメッシュケージです。カメレオンは外部からの視線でもストレスを感じるため、周りが見えにくいメッシュケージの方が安心して生活することができるのです。
2、ケージの中に枝や植物を設置し棲みやすい空間を作る。
先に述べたように、カメレオンは樹上性の動物です。木の枝をにぎって歩いたり、枝葉をシェルター代わりにする習性があるため、住みやすい空間を作るためには木の枝やつる性の植物が必要不可欠。ケージ内を上下に移動できるように工夫して枝や植物をレイアウトしましょう。本物ではなく、人工のものでも問題はありません。イミテーションの枝や植物は枯れる必要もなく便利です。 枝や植物は爬虫類専門店や熱帯魚店の他、インターネット通販や 100 円均一ショップで購入す ることも可能です。
3、部屋の隅の高いエアコンが直接当たらない場所にケージを設置する。
ストレスをかけないためにはケージの設置場所も重要です。カメレオンは上から見られることを嫌うため、ケージを人間の目線よりも高い場所に置く必要があります。また、人の出入りが多い場所や人から見られやすい場所でもストレスがかかるため、できれば部屋の隅が好ましいです。部屋の隅に高さがあるラックを置き、その一番上にケージを設置するのがいいでしょう。エアコンの風が直接当たらないようにも気を配ってあげてください。温度調節のために冬や夏は冷暖房の使用が必要になりますが、エアコンの風が生体に直接あたるのはよくないです。どうしてもエアコンの風が届く場所にケージを置かざるを得ない場合はケージの側面に布をあぶせるなどの工夫をしてください。
4,バスキングライトと紫外線ライトで光を当てる。
カメレオンは昼行性の爬虫類です。昼間に太陽からの紫外線を浴びることでカルシウムを作り出 します。そのため、紫外線ライトを設置しなければカルシウム不足となり、病気になってしまいます。 健康維持のために紫外線ライトを設置しましょう。選ぶライトによって紫外線の照射量が異なりますが、森林棲爬虫類用の中程度の照射量のライト を選ぶといいでしょう。また、体温調節のためのバスキングライトの設置も必須です。爬虫類は変温動物であるため、体温をあげるためにバスキング(日光浴)を行います。そのため、ケージ内の一部分にバスキングライトを照射してホットスポットを設けなければいけません。ホットスポットで体温調整を行うことでカメレオンは自らの体調を維持している のです。適正温度については後述します。
5,霧吹きや噴霧器で湿度を保つ。
水を与えたり、ケージ内の湿度を高めるために霧吹きや噴霧器を利用しましょう。カメレオンは基本的に水入れから水を飲みません。なぜかというと水入れにたまっている水は水として認識できないためです。滴り落ちる水滴や植物についた露が光る様子を見て水だと認識し飲んだり、湿度が高い霧の中で口を開け水分補給したりします。そのため、霧吹きや噴霧器が環境づくりで大きな役割を担うわけです。適正湿度については後述します。
6、適正温度と適正湿度を意識する。イエメンの気候を考える。
元々の生息地はアラビア半島南部のイエメン共和国です。その気候を考えましょう。健康のためには温度と湿度の管理が重要なポイントになってきます。適温については諸説ありますが、ケージの中でも一番温度が高いホットスポットと呼ばれる場所の周辺では 30℃前後、その他の場所は昼間およそ 20℃~30℃、夜間 15℃~20℃程度を目安にするといいでしょう。体調を崩している時は30℃前後を基準にケージ内が暖かくなるように気を配ると免疫力アップにつながります。温湿度計を設置して温度を観測し、バスキングライトや赤外線ライト、暖突、パネルヒーターなどの保温器具にエアコンを併用して温度を調整するのがいいでしょう。より正確な温度コントロールをしたいのであればサーモスタットを保温器具と合わせて使うのもいいかと思います。湿度についても諸説ありますし、幅が大きいのですが、40~70%を目安にするといいでしょう。エボシカメレオンの環境については、ずっと乾燥している状態も、ずっと多湿な状態も、どちらもよくないとされています。霧吹きや噴霧器で適宜保湿するのがベストです。霧吹きであれば1日2回、2~3時間ほどで乾く程度の水分をふきかけるのがいいとされています。
7、給餌の際の栄養補給に気を遣う。
エサはコオロギやミルワームなどの生き餌が中心です。生きている昆虫を与えることが多いのですが、それだけでは栄養失調になり体調を崩してしまうので、カルシウムパウダーをふりかけたり、ビタミン剤を添加したりという工夫が必要です。エサ用昆虫にコオロギ用フードや野菜を与えて栄養状態をよくするのもいい方法です。日頃の栄養管理が長生きに直結しますので充分に気をつけましょう。
8、ハンドリングは最低限。
何度か述べたように、エボシカメレオンはストレスに弱い動物です。他の爬虫類よりも神経質で繊細で、人が関わることをあまり好みません。そのため、ハンドリングを最低限にとどめておかないと寿命が縮まってしまう危険性があります。人になれる場合がある、という話もありはしますが、それは割とレアケースで、関わり方に相当気をつけないとなれてはくれないと思います。ケージの手入れなどで生体をさわって移動させなければいけない場面も出てきますが、その際も必要最低限の接触にとどめておいた方が無難でしょう。
9、色や目の変化で体調の変化を察知する。
カメレオンはまわりの環境に応じ色を変化させる動物です。それに加え、実は気分や体調など、自身の状態によっても色は変化します。 そのため、体色を見ていれば生体の不調にも気付くことができます。体全体の色がくすんでしまった時は要注意です。また、目の状態の変化も体調のバロメーターとしてわかりやすいです。エボシカメレオンは弱っている時や感染症をわずらってしまった時など、体に何らかの不調が出た時、目が閉じたままになるケースが多いです。特に両目ともとじ、まったく開かなくなった時は要注意。この状態のエボシカメレオンは大分弱っており、目が開かないため自分でエサを食べることができずに体力を回復することができないという危険な状態に陥っています。すぐに動物病院へ行き治療しましょう。
エボシカメレオンに多い病気
動物の病気は死に直結してしまうため非常に危険です。発見次第、すぐに動物病院へつれていき処置しましょう。以下ではエボシカメレオンに多い病気をいくつかご紹介します。
1、クル病
ビタミンDやカルシウムの不足から骨格形成に異常がでてしまう病気です。骨の変形により上手く動けなくなり、木から落ちてしまったり、捕食ができなくなってしまったりします。きちんとカルシウムを与え、日光浴を充分にさせることで予防は可能です。
2、マウスロット
口内炎です。感染症や寄生虫、ケガなど様々な原因で発症します。生き餌がカメレオンにかみついたり暴れたりして傷を作ることでも発症してしまうため要注意です。患部が腫れ、唇が壊死するなどの症状が現れ、場合によってはストレスで死んでしまうこともある深刻な病気です。動物病院へ連れていきすぐに治療しましょう。
まとめ
できるだけ長生きしてくれるための、爬虫類専門店での個体の選び方、ケージの環境の整え方などを説明しました。ケージの広さや大きさ、温度、湿度などの環境も重要でした。木の枝も入れてあげましょう。触り過ぎもストレスになります。カルシウムやビタミン豊富な餌を与えたり、日光浴をさせたりすることも必要です。長くペットと楽しい時間を過ごしたいですね。