昆虫界の生きた化石、ムカシトンボ。調べてみたら、さすがムカシのトンボ。他のトンボとは一味違うのであった。そしてヤゴ時代がやたらに長いです。これから、その生態や生息地、ヤゴなどについて、気になるので、調べていきます。
生態は?
ムカシトンボはトンボ目のムカシトンボ科に分類されます。トンボ目の中で最も原始的な特徴を残した生きた化石です。約1億5千万年前からの残存種です。
種類

ムカシトンボ科のトンボは日本の山地、中国黒竜江省、ヒマラヤ山脈周辺で見つかった3種のみです。日本の固有種は、かの日本昆虫学会のシンボルマークにもなっている。その3種は遺伝子的に殆ど相違なく、最終氷期(ウルム氷期)にアジアに分布していた集団が、地球が温暖になるのに伴い寒冷地に遺存した結果、現在の様な分布になったと考えられている。
大学での研究は?
北海道大学の研究で、さきほどの三種のムカシトンボの遺伝子を解析しました。これらの三種の遺伝子の違いは少なく、ほぼ同一の種類であることがわかりました。
大きさ
ムカシトンボの体長は5cm前後で黒地に黄色の模様がある。翅の長さは3cm前後で、前翅と後翅の形が似ている。ギンヤンマは体長が7cmあるので、ムカシトンボはギンヤンマより一回り小さいです。
見分け方

一般的にトンボは、止まるときには翅を開いているものだが、ムカシトンボは、イトトンボやカワトンボの様に4枚の翅を重ね合わせて閉じるという、あまりトンボっぽくない止まり方をする。ムカシヤンマと間違われることがあるが、ムカシヤンマは8cmほどで大きく、また翅は開いて止まる。
生息地

国内では北海道・本州・四国・九州の山間部の、森林に囲まれた、水が綺麗で夏でも16-17度くらいの水温の低い渓流に生息する。各都道府県に数カ所ほどの生息地があり、4月後半から6月頃に見ることが出来る。全体的にいえば、現在も多数生息している様だが、ダム建設などの開発などにより清流が減り、宮城県、三重県、長崎県で絶滅危惧種に指定されている他、準絶滅危惧種に指定されている地域もある。国内には同じトンボのギンヤンマも生息しています。
ヤゴ時代がやたら長い
川岸の植物に産卵し、約2ヶ月後に孵化したムカシトンボの幼虫(ヤゴ)は、自分で川まで跳ねていき、最初の脱皮をして、そこから5〜8年程度の水中生活をする。普通のトンボは1年くらいなのに比べると、ムカシトンボのヤゴの期間はやたら長い。そして、その間は早瀬(河川急流部)の大きめな石の裏側にしがみついている。近寄ってきたヒラタカゲロウの幼虫などを捕食しつつ、脱皮を重ねて成長する。数年間、急流で岩の裏にしがみついて暮らすって、長すぎです。今時の、ゆるい子育てと違うところが、さすがのムカシのトンボなのだった。
ヤゴ時代の生活は?
また、ヤゴ時代の移動方法は徒歩のみ。トンボ科などのように直腸から体内の水をジェット噴射させて進むハイテク機能とかはついていないのだ。その過酷なヤゴ時代を経て、羽化の1ヶ月からは陸上生活を行う。この間にエラ呼吸から空気呼吸に切り替える。この切り替え期間も、他のトンボは数時間くらいが多いのに、ムカシトンボはやたら時間がかかる。とにかくなんでも他のトンボの何倍も時間をかける。

ペットとしてヤゴの飼育は出来る?
できなくはないが、しっかりとアクアテラリウムの環境を整えないと難しい。ムカシトンボを育てた経験のある人によると、
(1)酸素化、(2)高温にならない環境作り、(3)足場となるザラザラした石を入れる、の3点が飼育のポイントとなる。
とのこと。エサはヤゴのサイズにあったイトミミズを入れておけば食べてくれます。
動物園で見れる?
現在、生きているムカシトンボを見ることのできる動物園や昆虫館はありません。標本であれば、佐用町昆虫館に展示してあります。

四万十市のトンボ王国の中にある四万十トンボ自然公園では、野生のムカシトンボが生息しています。また、学遊館あきついお(トンボ館とさかな館)もあり、色々な種類のトンボの情報を知ることができます。高知県に旅行した際は、ぜひトンボ王国にも立ち寄りましょう。
まとめ
数年間のヤゴ時代を経て、成虫になったら1ヶ月くらいの儚い命のムカシトンボ。コツさえ掴めばヤゴの生息地を見つけるのもそう難しくないです。ぜひ、ヤゴのアクアテラリウムを作ってみたいですね。綺麗な渓流、川にかかった植物、その下の岩には、ムカシトンボのヤゴが張り付いているかもしれない。