テレビ番組やドキュメンタリー映画で、アオウミガメやアカウミガメをよく見かけます。優雅に海中を泳ぐ姿や、砂浜で産卵する様子、孵ったばかりの子ガメたちが海を目指すところなど、私たちに癒しや感動を与えてくれます。そんなウミガメたちを見るために、産卵場所となっている海岸に観察に行く人も増え、産卵を見学するナイトツアーまで企画されています。そんな私たちに大人気ですが、現在のところ地球上に生息が確認されているものは7種、あるいは、アオウミガメとクロウミガメを別種として8種と言われています。そしてその種類によって大きさや体色、甲羅の形などの見た目、食べているものや住んでいる海域、産卵する季節も違っています。今回は、日本によくやってくるこの二種類の亀の違いについてみていきたいと思います。
アオウミガメの生態

アオウミガメ(Chelonia mydas)は、インド洋、大西洋、太平洋を中心に、熱帯・亜熱帯地方の海の比較的水深が浅いところに生息しています。世界の主な産卵地としてはオマーン、インドネシア、コスタリカ、ハワイ諸島、オーストラリアなど、南国のイメージが強い国が多いですが、日本の南西諸島や小笠原諸島にも産卵にやってきます。体の色は、背中側が黒っぽい濃緑色、腹側は淡黄色です。
アオウミガメ(英語ではGreen Sea Turtle)という名前から青色のカメかなーと思いがちですが、この名前の由来は、体脂肪の色が青緑色なところからきているようで、決して見た目は青くありません。甲羅は幅が広く、タイルを張り合わせたように平坦でキレイです。アオウミガメは、目の上の鱗の模様がはっきりと2枚にわかれて見えます。もし浦島太郎伝説に登場するのがこの亀だった場合、甲羅の上に乗ると滑り落ちそうですね。
大きさ

アオウミガメの甲長(甲羅の縦の長さ)は一般的に80~100㎝、体重は70~230㎏と、ウミガメの中でも大きくなる種です。
餌

食性は雑食で、幼体の頃はカニやクラゲなども食べますが、大きくなると海草や海藻などの植物性のものを主に食すベジタリアンなカメです。餌として海藻類を食べるため、皮下脂肪の色が青っぽくなります。
産卵
アオウミガメの産卵期は夏で、日本には5月から9月にかけて産卵にやってきます。1シーズンで数回に分けて産卵をしますが、一度の産卵で100個前後の卵を産みます。多い個体では150個以上も産むそうで、およそ40~70日で孵化します。

アカウミガメの生態

アカウミガメ(Caretta Caretta)の生息域は、大西洋、太平洋、インド洋、地中海の亜熱帯・温帯域です。アメリカ東部、ブラジル、オーストラリア北部、オマーン、南アフリカなどが産卵地として有名です。日本においても産卵が確認されている場所がたくさんあり、日本海側では石川県の能登半島以南、太平洋側では、福島県のいわき市が北限だといわれており、茨城県以南の海岸の各所で産卵が確認されています。日本国内で有名なのは紀伊半島南部や屋久島などで、日本海側よりは、太平洋側に多くみられるようです。
アカウミガメは、目の上の鱗の模様が5枚の花弁の形にわかれています。上の画像でも確認できます。ちなみに、英語ではLoggerhead sea turtle(ロジャーヘッド タートル)、頭の大きなカメという意味で、その名の通りに他のウミガメに比べて大きい頭部も特徴です。甲羅は少々ゴツゴツとした感じがあり、甲羅の周囲の部分がギザギザしています。体の色は、背中側が赤褐色、腹側は淡黄色で、アカウミガメの名前の由来は、甲羅の背中側の色からきているそうです。
大きさ

アカウミガメの甲長は70~100㎝、体重は70~180㎏と、アオウミガメに比べると一回り小型ですね。
餌
食性も雑食ですが貝類やカニ、ヤドカリなどの底生生物や、イカ、クラゲなど動物性の生き物を餌として好むようです。前肢で海底を掘って砂を巻き上げ、食べ物を探します。
産卵
アカウミガメの産卵期は春から夏にかけてで、日本の海岸には4月から7月に多くやってきます。アオウミガメと同様に1シーズンで数回に分けて産卵をします。およそ40㎜の卵を、一度の産卵で70~150個産み、50~80日で孵化するそうです。
寿命は?

寿命が長いです。どちらも70年~80年生きます。
アオとアカの違いはココだ!見分け方

上にある画像を見ると、頭の大きさや甲羅の形や色でなんとなくわかりますね。上述したように、見た目も生態も似ているようでちょっとずつ違います。やはり頭の鱗の模様や枚数が一番わかりやすいです。ほかには、両方の亀の違いを項目別にみていきましょう。
生息域の違い
アオウミガメは熱帯~亜熱帯、アカウミガメは亜熱帯~温帯。アオウミガメが暖かいところ好むのに比べ、アカウミガメは比較的涼しい海にも住んでいます。
体格の違い
甲長は両方とも70~100㎝程ですが、体重はアオウミガメが70~200㎏以上と大型であるのに対し、アカウミガメは70~180㎏と、アオウミガメと比べると若干小型であるようです。
甲羅の色と形の違い
アオウミガメの甲羅は背中側が濃緑色、腹側は淡黄色。表面がツルツルでキレイ。アカウミガメの甲羅は背中側が赤褐色で腹側は淡黄色。表面はゴツゴツとしていて、周囲がギザギザ。
食性の違い
両方とも雑食性ではあるが、アオウミガメは植物性を好むベジタリアン。対してアカウミガメは動物性を好む肉食系。ベジタリアンなのに大きくなるアオウミガメは、よっぽどたくさん食べるのでしょうか・・・。
産卵の違い
産卵場所については、有名な産卵地となっている海岸でも、アオウミガメとアカウミガメの両方が確認されている場所も多いが、アカウミガメの方がより涼しい地域でも産卵できるようです。ちなみに、日本は北太平洋海域のアカウミガメの産卵地の北限地となっていて、ウミガメ研究者にとっては重要な場所なのです。産み落とされる卵の大きさはアオウミガメが45㎜程、アカウミガメは40㎜程で、アオウミガメの方が一回り大きいようです。産卵時期は、アカウミガメが4月から始まるのに対してアオウミガメは5月と、つくづく暖かいのが好きなアオウミガメですね。
性格の違い
アオウミガメは穏やかです。よくスキューバダイビングで、一緒に泳いでいる画像を見ます。アカウミガメは動物食が強く、やや気が強いです。
その他
両目の間の模様や、頭部の形もアオウミガメとアカウミガメで異なります。また、アオウミガメは、他の種では見られない「甲羅干し」という行動をすることでも有名です。
絶滅危惧種
アオウミガメもアカウミガメも絶滅危惧種です。やはり、海洋や産卵場所となる海岸などの環境問題などのため、絶滅危惧種となっています。
水族館でみれる?

マリンワールド海の中道、美ら海水族館、鴨川シーワールド、新江ノ島水族館、すみだ水族館、下田海中水族館、八景島シーパラダイスなど、各地の水族館で見ることができます。すみだ水族館は小笠原村と協力して、アオウミガメの赤ちゃんを育てています。成長したら、小笠原諸島の海に放流しています。無事に育ってほしいです。
ペットにできる?

アオウミガメやアカウミガメは広大な海洋や産卵地の島を回遊している生き物です。そのため、一か所でとどめてペットにすることはできません。どうしても近くで見たいかたは、南の海に旅行して、スキューバダイビングをして見ましょう。
まとめ
アオウミガメとアカウミガメの違いをまとめると、
- 大きさはアオウミガメの方が一回り大きい。卵もアオウミガメの方が大きい。
- 寿命はどちらも70年~80年。
- アオウミガメは甲羅がツルツルしていて、アカウミガメはギザギザしている。
- アオウミガメは目の上の鱗の模様が2枚、アカウミガメは5枚。
- アオウミガメは餌として植物性を好み、アカウミガメは餌として動物性を好む。
- アオウミガメは穏やかな性格で、アカウミガメは気が強い。
です。