あなたは、「水族館」と言ったらどんな生き物をイメージしますか?
- 大きな水槽を優雅に泳ぐサメ。
- 大群を成して縦横無尽に泳ぐイワシやアジ。
- キレイなサンゴの周りを散歩するように泳ぐ熱帯魚。
- はたまた、暗い水槽でキラキラ輝く深海生物。
人それぞれイメージするものは違うと思いますが、愛くるしい姿のイルカやオットセイ、アザラシなどを見たい!という人も多いでしょう。そして、注目を集めているのが、イロワケイルカ(英語ではCommerson’s Dolphin)です。
どんな生態?

イロワケイルカの学名はCephalorhynchus-commersoniiです。ハクジラ亜目マイルカ科イロワケイルカ属です。この仲間には他に4種類のイルカがいますが、今回紹介するこの種類は、体の模様が陸上に生息するジャイアントパンダに似ていることから、日本ではパンダイルカと呼ばれることも多いですね。ただ、個人的には「ジャイアントパンダよりもこちらの方が可愛いかなぁ~。」と思いますが!
生息地

生息地は、南アメリカ大陸の南端にあるフエゴ島およびフォークランド諸島周辺の海域と、インド洋南部のケルゲレン諸島周辺の海域の二つの限られた海域だけのようで、オキアミと呼ばれる動物性プランクトンや小魚、イカ類、甲殻類などを食べて生活しています。この2か所の生息地は両方とも日本からはかなり離れており、さらに冷たい海を好むので、野生の個体が日本近海に迷い込んでくる可能性はほとんど無さそうですね。
大きさ

体の大きさは、成体の体長で150㎝前後が一般的だそうで、最も有名で、世界中の海にいるハンドウイルカの体長が2~4mほどなので、それに比べるとかなり小さいことが分かります。体重も他に比べて軽く、35~65㎏と、人間と同じくらいですね。イロワケイルカ属の他の種類も小型で、クジラ目全体でも最少の部類のようです。また、背ビレの形も特徴的です。カワイルカの仲間を除くと、イルカの仲間の背ビレは一般的に先が尖っていて、もし一緒に泳ぐとしたら、掴まりやすそうな形をしています。しかしこのイロワケイルカの背ビレの先端はかなり丸みを帯びていて、溶けたアイスの角みたいになっています。
特徴は?

一番の特徴と言えばやはりなんといってもその色ですね。日本でパンダイルカと呼ばれるだけあって、みごとに白黒です。海で白黒の生き物というと、シャチを連想する人も多いと思いますが、シャチは背中側と腹側で色が分かれ、頭部の両側に、車のヘッドライトのように白くなっている模様が印象的です。一方イロワケイルカの方はと言うと、頭、背ビレ、尾ビレ、胸ビレは黒色で、胴体の部分と喉元が見事に真っ白です。おそらく、シャチよりも白い部分が多いのではないと思いますが、なぜこのような模様になったのかは未だ不明だそうです。
神秘的な気持ちにさせてくれる!? 白と黒のコントラストが魅力的!
上述したように、パンダのように白色の部分と黒色の部分が分かれているイロワケイルカですが、その色の分かれ方は非常に見事で、白色と黒色のコントラストはまさに現代アートの域ではないかと思います。その泳ぐ姿はまた神秘的で、可愛らしい動きなのに、なぜか芸術品を見ているかのような感動があります。
まだ泳いでいる姿を見たことがないという方は、こちらのネット上の動画を参考にしてみて下さい。
鳴き声でのコミュニケーション方法も違う

そして、イロワケイルカは鳴き声でのコミュニケーション方法も他のイルカたちと異なるところがあります。一般的なイルカの仲間は、クリックとホイッスルと呼ばれる2種類の音波を使い分け、クリックで反響定位(エサの方角や距離を測定)を行い、ホイッスルで仲間に情報を発信したり、呼びかけたりします。しかし、イロワケイルカはクリック音のみを発し、ホイッスルは使用しないのです。この事実は現在研究されていますが、ホイッスル音を使わずにどうやってコミュニケーションを取っているのかは、まだまだ謎が多いようです。泳いでいる姿や、水族館について!
見ることのできる水族館は?

それでは、この神秘的な姿を見せてくれるイルカがいる水族館は、いったいどこなのか?調査してみたところ、
- 鳥羽水族館(三重県)
- 仙台うみの杜水族館(宮城県)
- 横浜八景島シーパラダイス(神奈川県)
なんと日本ではこの3つの水族館だけです。ちなみに、横浜八景島シーパラダイスで飼育されているイロワケイルカは、繁殖計画のために鳥羽水族館と仙台うみの杜水族館からそれぞれ引っ越ししてきた2頭です。以前は他にも、のとじま水族館、マリンピア松島水族館、サンシャイン国際水族館などで飼育されていたようですが、いろいろな理由で今はこの3か所のみで飼育されているようです。また、現在では日本に連れてくることが非常に難しくなっています。世界で最も水族館の多い国である日本でこの状況ということは、海外の水族館でもきっと珍しいイルカになっているでしょう。
まとめ

それでは最後に、イロワケイルカについて大事なことをまとめてみると、
- パンダイルカとも呼ばれる、白黒模様の小さなイルカ。
- その模様はとても神秘的で、一目見たら忘れられない美しさ。
- 野生の個体は南米の南端と、インド洋南部の海域にのみ生息。
- 日本で飼育している水族館は3か所だけ。(鳥羽水族館・仙台うみの杜水族館・横浜八景島シーパラダイス)
今後は、飼育下での繁殖も活発になって、日本中の水族館でその神秘的な姿が見られるようになるといいですね!