最近、日本はおろか世界各地でも専門店が増え、魚介類の生食文化が無い欧米でも親しまれている食材、それは・・・、そうです、牡蠣ですよ!敷詰められた氷の上に、早く食べてくれーと言わんばかりに、新鮮なものはキラキラ輝きます。
- そのまま口に運んで海の味を堪能するも良し!
- 薬味塩&レモンや、刻みネギ&おろしポン酢といった引き立て役と一緒に食べ、味のハーモニーを楽しむも良し!
- さらには網焼きにして醤油をかけて、ちょっと焦がした香ばしい香りと一緒に頬張るも良し!
好きな人には堪らないですよね!けれど、
- 「好きだけど、食べられるのって冬だけじゃない?」
- 「Rの付かない月には食べたらダメって教わったけど?」
- 「冬の牡蠣は小さくて、夏になったら大きくなるよね?」
なんて思っている方も多いのでは?実は、一般的によく目にするのは、スーパーマーケットなどの魚介コーナーでよく見かけ、冬によく食べられる「真牡蠣」という種類と、食料品店などの店頭にはあまり並ばないが、春~夏によく食べられる「岩牡蠣」という、2種類がいるのです。今回はそんな別々のシーズンに登場する2種類の、本当に美味しく食べられる旬の時期について、ご紹介していきます。
冬の味覚と言えばやっぱりこれ、旬の真牡蠣!

皆さんがイメージするのは大半がこちらの方だと思います。冬の代表的な食材としてテレビ番組や雑誌でも取り上げられ、生でそのまま食されたり、加熱用は味噌汁や鍋物の具材になったり、網焼きで食べられたりしていますよね。

ちなみに、生食で食べるためには、指定された海域で養殖されたもので、なお且つ収獲後に紫外線殺菌されたキレイな水で洗浄されたものでなければいけません。この旬の真牡蠣は、北海道以南では一般的に10月上旬ごろから市場に出回り始め、3月下旬か、年によっては4月上旬まで店頭に並んでいます。貝殻から剥かれたものが、海水と一緒にパック詰めにされたものや、トレーに入って売られているところをスーパーマーケットやデパートで目にしたことがある方も多いはず。
旬での美味しい食べ方

僕のお勧めの食べ方は、(生でいただいてもいいのですが)、やはり網焼きですね!殻付き(殻付きではない場合は、アルミホイルで包み焼きに)の牡蠣にバターと醤油を少し落として焼き、グツグツしてきたところに少しだけ粗挽きの黒胡椒ときざみネギを乗せて・・・。
知る人ぞ知るシーズン夏の旬食材、岩牡蠣!

こちらを実際に見た事のある方は、もしかするとそれほど多くないかもしれません。なぜなら、上述したように店頭に並ぶことが少ないからです。最近では水産物の流通はものすごく発達し、デパートや一部商店では見かけるかもしれませんが、それでも稀です。基本的には産地直送で生産者の方から送っていただくか、養殖をしている海辺の近くの市場に出向いて買い付けるか、もしくは海鮮居酒屋や料理屋へ食べに行くのが現実的です。実際、海無し県で生まれ育った僕は、大学生になるまでは食べた事はおろか、見た事もありませんでした。これは、出回り始めるのは春からで、暑くなっていくと同時に流通量も増え、夏に最盛期となります。つまり、真牡蠣のシーズンがちょうど終わる頃から入れ替わりで岩牡蠣がシーズンインする訳ですね。僕は大学生の時に海辺の居酒屋でアルバイトをしていましたが、学校の夏休みはこのシーズン真っ只中だったので、毎日何十人と訪れるお客さんのおかげで、ひと夏で貝殻を開ける作業がすごく上達しました。そして、お盆を過ぎて徐々に岩牡蠣のシーズンが終わると、またすぐに真牡蠣がシーズンイン、という訳です。ということは、ほぼ一年中新鮮なものを食べることができるのです。
旬での美味しい食べ方

この岩牡蠣のお勧めの食べ方は、なんといってもお刺身!大根おろしに一味唐辛子を少し混ぜた「もみじおろし」と、刻んだ青ネギを薬味に、ポン酢でいただくのが良いかと・・・。
本当の旬を知るべし!

ここまで読んでいただいた方は、市場ではその2種類のシーズンが夏と冬で上手く入れ替わるようになっているのはお分かりいただけたと思います。しかし、ここで一つ、すっごく重要なことがあります。この事実を知らなければ、本当の美味しさを知らないまま、食べごろではないものばかり食べてしまうことになりかねません。それは、シーズンだからと言って、常に最高の美味しさになっている訳ではないのです。他の多くの食材でも言えることですが、出回る時期=旬だとは限らないのです。世間では、
- 真牡蠣の旬は秋~冬
- 岩牡蠣の旬は春~夏
だと言われており、確かに間違いではありません。しかし僕から言わせれば、美味しさがピークを迎えるのはシーズンの内でもほんの2~3週間ほどの時期で、それ以外の時期は、旬ではないのです!!!そもそも旬というのは本来、その食材が最高に良い状態になる時期の10日間を意味する言葉だそうです。(これは私も最近知りましたが・・・)。秋口に出回り始めたばかりの真牡蠣や、春から初夏にかけて料理屋さんで「初物」とうたって提供される岩牡蠣などは、食べてもそれほど美味しいとは思わないです。いや、美味しいには美味しいのですが、本当に美味しい時期のものに比べると、やはり大きさも食感も、そして当然味も、物足りないのです。
旬以外の時期に味が落ちるのはなぜ?

真牡蠣に関して言えば、春~夏にかけての産卵に備えて冬の間に体内にエネルギーと栄養分を溜め込み、海の水が徐々に温かくなる3月下旬頃から、産卵に向けてエネルギーを使い、溜め込んだ栄養分を生殖腺に移していきます。この過程で身は痩せていき、同時に味もどんどん落ちていくのです。そして産卵期を終えた夏のものは「水ガキ」などと呼ばれ、美味しさは失われ、水っぽくなってしまうのです。元来、「海のミルク」と呼ばれ、洋の東西を問わず昔から世界中で食されてきました。その理由は、エネルギーの源であり、味にコクとクリーミーさを与えるグリコーゲンや、体の調子を整え、磯の香りの素となるミネラルやビタミン類、そして近年とても注目されているタウリンやアミノ酸などの高機能な栄養素が豊富に含まれているからです。それゆえに健康にも美容にも良いとされてきたからなのです。そして、「海のミルク」の由縁たる豊富な栄養素が一番多く、「美味しさがピークに達する時期はいつなのか!?」というと、産卵期に入る直前の2月下旬~3月中旬です。以前、3月上旬に石川県の能登半島で開催されたマラソン大会に出場したことがありました。その際に会場で食べた真牡蠣は格別に美味しく、芳醇な磯の香りからは日本海の荒々しさを感じたのを思い出します!!
岩牡蠣の旬は?

また、これに関しては事情が異なります。産卵期は同様に夏で、春から生殖腺に栄養素を供給していきます。しかし異なるところは、その生殖腺自体が独自の美味しさを持っており、さらに真牡蠣に比べて大きく発達するため、生殖腺に栄養分を溜め込む夏、7月中が一番美味しくなる時期ですね。だから、生殖腺に栄養分が充分行き届いていない春から初夏にかけてではまだまだ未熟なのです。
注意点!

ただしここで一つ、注意してほしいことがあります。牡蠣の養殖はその年の海流や天候、気温に大きく影響されます。また日本での養殖は九州から北海道までの全国各地で行われているため、水温の関係で旬の時期が海域によって少しずつ異なるということです。個人的には、内湾で比較的水温の高い瀬戸内海産だと、2月上旬頃から食べごろが多くなると思います。また東北地方の北の海域や北海道で養殖されているものは、なんと5月頃まで美味しくいただけるようです。本州で食べ損ねたり、まだまだ食べたりないという方々は、津軽海峡を渡って食べに行くもの、良いのではないでしょうか。
まとめ

さて、ここで今回のお題をまとめると、シーズンと本当の旬はこうなります!
- 真牡蠣・・・シーズンは秋~冬だが、美味しさのピークは春先の2月~3月中旬まで。
- 岩牡蠣・・・シーズンは春から夏、一番美味しいのは7月いっぱい。
ちなみに・・・、最近は、旬の時期のものを貝殻から剥いて冷凍し、袋詰めしたものが一年中出回っていますよね。私も通販を利用してよく買っています。味も濃厚でしっかりと風味があり、食品の保存や流通技術の発達にいつも感動し、感謝して食べています。ごちそうさまです!