さて、今回はオカメインコのカラーバリエーションと種類について書いていきます。ショップで見かけるオカメインコには、グレーを基調とした「ノーマル」のほかに、色や模様の変わったタイプがいます。これらは「色変わり」と呼ばれます。生物学的には全てオカメインコの同一種ですが、色変わりはさまざまな突然変異の色調変化を血統的に固定した「品種」です。ブリーダーや団体によって名称も見解もさまざまとされています。その品種は、体の羽色、体の模様、顔部分の色の3つの要素の組み合わせで構成されます。
ポピュラーな色(カラー)の種類
オカメインコの色は2つの色素に由来します。色変わりの品種は全てこの色素が変異したもので、薄められたり変色したり欠如することによって生まれたものです。
- メラニン色素。黒〜グレー〜茶色を出す色素です。ノーマルグレーの色はこれによるものです。メラニン色素は強い色で、リポクロームと両方が存在する場合は、常にメラニンが勝ちます。
- リポクローム色素。カロチノイドによる黄色〜オレンジ色を出す色素です。顔の黄色、チークパッチのオレンジ色はこれによるものです。
では、一般的なカラーの種類を紹介していきます。
ノーマルグレー
優性遺伝で、オーストラリアの野生で見られる原種の色彩と模様の品種がノーマルグレーです。白い翼体、黄色の顔及び明るいオレンジのチークパッチ以外の部分は、全身暗い灰色の羽毛です。オスの成長は、明瞭な黄色の顔及び明るい赤いチークパッチを持っていますが、メスの顔は淡いグレーに黄色がわずかに混じったようで、チークパッチも不明瞭です。ヒナ換羽前の幼鳥はオス・メス共にメスのような外見を示します。ノーマルグレーでも、首および頭の後ろの羽毛に、ティッキング(白や黄色の小さな色抜け部分)があれば、それは表面上はノーマルグレーでも、パイドの遺伝子を隠し持っていることを意味します。全ての色変化、模様、顔色に対して優性にに作用します。色変わり品種は全てノーマルグレーが変異したものです。成長のオスとメスの外見状の違いは、オスは顔が鮮明な黄色で、メスは顔がグレーにわずかに黄色です。オスの尾羽はグレー色で、メスは尾羽に黄色の縞模様です。オスの風切り羽はグレー色で、メスは風切り羽に黄色のスポイト模様です。うちの子はノーマルグレーで、まだ換羽中ではありますが、顔はだんだん黄色になってきてチークパッチもオレンジ色になってきました。うちの子をペットショップでお迎えした際、レジの表示には「並オカメ」と書かれていて、並オカメインコと呼ぶこともあります。オカメインコを初めて飼育する方や、飼育にまだ自信のない方、できるだけ丈夫なオカメインコをお迎えしたい方におすすめの品種です。お店でも扱っている店舗が多いイメージです。値段は16800円前後で、品種の中では一番お手頃価格で販売していることが多いです。
ルチノー
性染色体劣性遺伝で、アメリカで生まれた色変わりの品種です。メラニン色素が欠けたタイプで、全身がクリーム色、頬のオレンジ色のチークパッチはオス・メスともに強調されています。クチバシと足はピンク色。通称「白オカメ」と呼ばれて人気が高く、輸入されているヒナの多くがルチノーです。ヒナの時は赤目ですが、成長するに従って色が濃くなって黒目に近い「ブドウ目」となります。これはルチノーが完全にメラニン色素を失っていないためとも考えられています。冠羽の下に無羽部を生じますがこれは病気ではなく遺伝的なもので、特に大量繁殖個体ではその面積が大きく、血統管理されたルチノーは完全な無羽部ではなく、すだれ状に羽毛で覆われています。メスと成熟したオスを識別することは困難ですが、よく見ると尾羽の裏側に黄色の縞模様が残っているのがメスです。また、背翼部に黄色のパール模様があるタイプはルチノーパールで、その両方の遺伝子を持っています。パイドのグレー抜けが100%に及ぶと一見ルチノーに見えますが、それは黒目で「クリアパイド」と呼ばれます。全身の黄色が強いタイプ(ルチノーパールパイドなど)は「イエロー(別名バターカップ)」と呼ばれますが、通常のルチノーが肝臓疾患で黄変した場合も同じような色になりますので、注意が必要です。成鳥のオス・メスの外見上の違いは、オスもメスも顔は体色よりやや濃いクリーム色。オスの尾羽は体色と同じで、メスは尾羽に黄色の縞模様です。ルチノーは人気のカラーで、ペットショップでもよく販売しているのを見かけます。我が家ではルチノーを見ると、ルチノーの「るっちゃん」と勝手に呼んでいます(笑)。値段は19800円〜とノーマルグレーよりは高めです。
シナモン
性染色体劣性遺伝で、ベルギーで生まれた色変わりの品種です。メラニン色素が茶色に変色したタイプで、その他の特徴はノーマルグレーと同じですが、リポクロームが強調されて、メスの顔色がノーマルグレーよりは黄色みが強いとも言われます。シナモンはショップでは「イザベラ」と呼ばれることもあり、暖かみのある色合いが好まれて非常に人気があります。ヒナの時はブドウ目ですが、成長するに従って色が濃くなって黒目になります。クチバシおよび足の色はノーマルグレーと同じようにグレーがかっています。成鳥のオス・メスの外見上の違いは、オスは顔が鮮明な黄色で、メスは顔がシナモンにわずかに黄色です。オスの尾羽はシナモン一色で、メスは尾羽裏が黄色の縞模様です。オスの風切羽はシナモン一色で、メスは風切羽に黄色のスポット模様です。
パイド
常染色体劣性遺伝で、アメリカで生まれた色変わりの品種です。体中のあちこちでメラニン色素が部分的に欠落し、クリーム色が発色してまだらになったタイプです。一つとして同じ模様がないためとても人気がある品種で、品評会などでは、さまざまな基準を設けて評価されているようです。パイド同士の両親の子供は、両親よりも色抜けて面積が広がる傾向があり、それを利用してより広範囲に色抜けをした個体を生み出そうという繁殖努力がなされています。パイドは劣性遺伝なので表面上はノーマルグレーやシナモンでも、実はパイドの遺伝子を隠し持っているスプリットである場合があります。この場合、後頭部や首筋に小さな色抜け(ティッキング)が生じることがありますので、「パイドは不完全劣性遺伝」とも言われています。パイドは色抜け度合いに応じて3つに分類されることがあります。「ライトパイド」は色抜けが少なく、グレー部分が勝っているタイプです。「ヘビーパイド」は色抜けが進み、クリーム色が優っているタイプで、特に色抜けが見事な場合を「リバース」と呼ぶこともあります。「クリアパイド」は完全に色抜けが進み、ルチノーのようにクリーム色一色となったタイプです。
クリパイドは黒目で、足もルチノーと違ってグレーがかっていてレアな種類となります。またルチノーのような後頭部の無羽部も通常では見られません。頭部だけが完全に色抜けているタイプは、特に「クリアフェイス」と呼ばれることがあります。成鳥のオス・メスの外見上の違いは、オスは色抜けが少なければノーマルグレーと同じ基準で、メスは色抜けが多いと識別困難です。
パール
性染色体劣性遺伝で、ドイツで生まれた色変わりの品種です。羽毛1枚1枚単位でメラニン色素が部分的に欠落し、クリーム色が発色して「さざなみ」のようなまだらになったタイプです。欧米ではこの模様を「スカラップ(貝殻のようなレース飾り)」と表現し、模様のある部分をレース編みに例えて「レーシング」と呼んでいます。パールはノーマルよりも全体にリポクローム色素(黄色)が強調される傾向があり、特に黄色の強いタイプを「ゴールデンパール」、淡く白いタイプを「シルバーパール」と呼ぶこともあるようです。グレーがシナモン色に変色すれば、「シナモンパール」となります。パールの特徴は、成鳥のオスでは次第に模様が消えてしまい、ノーマルのようになってしまうことです。これは男性ホルモンの分泌がメラニン色素を増加させることによると考えられており、高齢鳥では再びパール模様がよみがえる例があります。また一部では成鳥のオスでもパールが消えないタイプも生まれているようです。ルチノー遺伝子とパール遺伝子を共有する場合は、「ルチノーパール」となって、クリーム色の地に濃い黄色のパール模様が出ます。この場合でもオスは成鳥になると模様が消えてしまいます。成鳥のオスとメスの外見上の違いは、オス・メス共にノーマルグレーと同じ基準です。オスの成鳥ではパール柄が消えて、メスの成鳥ではパール柄が残ります。
パールパイド
劣性遺伝の複合で、2種類の遺伝子の両方を受け継いで、パイドのグレー部分にパールが表れたタイプです。パイドの発現の度合いで、通常のパールか、パールパイドであるかは一件では判断しにくい場合がありますが、大雑把に言って、翼を閉じた形を背後から見て、風切羽のグレーが色抜けしているのが「パールパイド」で色抜けしていないのが「パール」と言えます。それを原則として模様の現れ方、色抜けの具合を観察すると、両者を判別することができます。グレーがシナモン色に変化すれば、「シナモンパールパイド」となり、レアな種類です。成鳥のオスとメスの外見上の違いは、ノーマルに準じますが、色抜けの具合で識別不可能であることもあります。
ホワイトフェイス
常染色体劣性遺伝で、オランダで生まれた色変わりの品種です。顔部分だけでなく全身でリポクローム色素(黄色)が欠けたタイプです。オカメ顔の特徴であるオレンジ色のチークパッチが消え、顔色が白いので、「頬白オカメ」と呼ばれることもあります。一見地味ですが、シックな美しさが愛されて人気のある品種です。成鳥のオスは、ノーマルグレーの顔の黄色とチークパッチの色が抜けるため、見事に白い顔になりますが、メスはノーマルグレーの場合と同じように、ぼやけた感じになります。模様はノーマル、パイド、パール、パールパイドがあり、また色でもシナモンやルチノーとの組み合わせがあります。ホワイトフェイスルチノーは、メラニン・リボクローム両方の色素が欠落するために純白(通称アルビノ)になります。成長のオスとメスの外見上の違いは、オスは顔が鮮明な白色で、メスは顔がグレーにわずかに白色です。オスの尾羽はグレー一色で、メスは尾羽に黄色の縞模様です。オスの風切羽はグレー一色で、メスは風切羽に白いスポット模様です。
オリーブ
常染色体劣性遺伝で、淡いグレーと黄色が混じり合って淡いオリーブ色のような色調となったタイプです。しかし青色色素を持たないオカメに緑色は本来あり得ず、じっくり観察してやっと緑味をやや感じる程度の「オリーブ色」でしかありません。緑をアピールする意味で「エメラルド」と呼ばれることもあります。全身、特に背翼部に「スパングル」と呼ばれる色の濃淡があります。これはパイドのように明確なまだらではなく、もやもやと曖昧な濃淡です。成長のオスとメスの外見上の違いは、オス・メス共にノーマルと同じです。
ホワイトフェイスルチノー(通称アルビノ)
劣性遺伝の複合で、メラニン色素(グレー)が欠けるルチノー遺伝子と、リボクローム色素(黄色)が書けるホワイトフェイス遺伝子を持ったタイプで、全身が完全に白色となり、赤目でピンク色のクチバシと足を備えています。パイドの完全色抜けである「クリアパイド」でホワイトフェイス遺伝子を持つ「ホワイトフェイスクリアパイド」は黒目で、明らかにアルビノではありません。
このタイプは「スノーホワイト」と呼ばれることもあり、レアな種類です。成鳥のオスとメスの外見上の違いは、オス・メス共に識別不能です。
ファロー
常染色体劣性遺伝で、オーストラリアで生まれた色変わりの品種です。シナモンの色調が淡くなったタイプです。メラニン色素が弱くなったためリポクローム色素が強く発現し、黄色い色調がシナモンよりも強いとされています。成鳥でも完全に赤目で、クチバシや足はシナモンと違って、ルチノーのようなピンクです。ファローとは「くすんだ淡い黄色」を意味する言葉です。成長のオスとメスの外見状の違いは、オス・メス共にシナモンに準じるが明確ではないとされています。
シルバー
グレーの色調が淡くなって、美しい光沢のある銀灰色になったタイプです。遺伝形式が優性(ドミナント)のものと、劣性(レセッシブ)のもの、2タイプがあります。
- ドミナントシルバー。優性遺伝で、イギリスで生まれた色変わりの品種です。優性遺伝であるため、シルバー遺伝子が1つの「シングルファクター」と2つの「ダブルファクター」の2パターンがあります。その両者に共通の特徴は、黒目で、クチバシ及び足はグレー係、頭頂部が他の部分よりも濃いダークグレーをしていることです。体色については、両者で色調のわずかな変化があります。シングルファクターはやや濃いめの色調で、オスは全身に「スパングル」と呼ばれる色の濃淡があります。メスはオスほどスパングルが明確ではありません。ダブルファクターはシングルファクターよりもグレーが淡く、銀白色となります。成長のオスとメスの外見状の違いは、オス・メス共にノーマルと同じです。
- レセッシブシルバー。常染色体劣性遺伝で、アメリカで生まれた色変わりの品種です。ファローのノーマルグレー版のように、成鳥でも完全に赤目で、クチバシや足はピンク色です。頭頂部も含めて全身が一様に光沢のある銀灰色となります。成長のオスとメスの外見上の違いは、オス・メス共にノーマルと同じです。
イエローフェイス
ヨーロッパで生まれた色変わりの品種です。チークパッチのオレンジ色が、濃い黄色になったタイプです。「イエローチーク」とも呼ばれます。雄の顔色の黄色みが強い場合、チークパッチの黄色と変化がなくなって顔全体が黄色一色に見える場合があります。イエローフェイスの遺伝形式には、シルバーと同じように、優性(ドミナント)のものと、劣勢(レセッシブ)のもの、2つのタイプがあります。
- ドミナントイエローフェイス。チークパッチがレセッシブより少しオレンジ色が強く見えますが、パステルフェイスよりは淡い色調です。同じ優性遺伝でもシルバーはシングルファクターとダブルファクターで微妙に色調の差がありますが、イエローフェイスではほとんど差が見られないとされます。成鳥のオスとメスの外見上の違いは、オス・メス共に体色の遺伝子に左右されます。
- レセッシブイエローフェイス。チークパッチがドミナントより淡い黄色と言われます。
どちらにせよ微妙な差である上、個体差もあるので外見から簡単に判断することは困難です。成鳥のオスとメスの外見上の違いは、オス・メス共に体色の遺伝子に左右されます。
パステルフェイス
常染色体劣性遺伝で、チークパッチのオレンジ色が淡くなったタイプです。イエローフェイスとの境界が曖昧で、外見で簡単に区別することは困難ですが、遺伝形式はイエローフェイスとは明らかに異なるもので、常染色体劣性遺伝と考えられています。ホワイトフェイスの遺伝子に対しては優性に働くため「パステルフェイスは優性遺伝(ドミナント)」と表記されるケースもあるようです。ホワイトフェイスとパステルフェイス両方の遺伝子を持てば、パステルフェイスが生まれます。「パステルフェイスは優性遺伝」と言う立場から、これを「シングルファクターのパステルフェイス」と呼び、ホワイトフェイスの遺伝子を持たないタイプを「ダブルファクター」と呼ぶことがあります。その両者に外見上の違いはありません。成長のオスとメスの外見上の違いは、オス・メス共に体色の遺伝子に左右されます。品種が非常に豊富で、店頭でお目当てのカラーがいない場合もあるとは思いますが、お出迎えは縁ですし、どんなカラーでも愛着を持てるくらい、オカメインコは可愛くて魅力がいっぱいです。
まとめ
最後に、オカメインコの種類をまとめてみます。
- ノーマルグレーは原種で、初めて飼うには丈夫でおすすめ、並オカメとも呼ばれる。
- ルチノーは人気の品種で通称白オカメ、オスとメスを見分けるのは困難だが、メスには尾羽の裏に黄色の縞模様がある。
- シナモンは通称イザベラ、非常に人気のカラー、メラニン色素が茶色に変色したタイプ。
- パイドは一つとして同じ模様がないためとても人気、体中のあちこちでメラニン色素が部分的に欠落し、クリーム色が発色してまだらになったタイプ、色抜け度合いに応じてライトパイド・ヘビーパイド・クリアパイドがある。
- パールは羽毛1枚1枚単位でメラニン色素が部分的に欠落し、クリーム色が発色してさざなみのようにまだらになったタイプ。
- パールパイドはパールとパイドの2種類の遺伝子を受け継いで、パイドのグレー部分にパールが現れたタイプ。
- ホワイトフェイスは頬白オカメとも呼ばれ、人気の品種、顔部分だけでなく全身リポクローム色素が欠けたタイプ。
- オリーブは淡いグレーと黄色が混じり合って淡いオリーブ色のような色調となったタイプ、オリーブ色はじっくり観察してやっと緑味を感じる程度。
- ホワイトフェイスルチノーは通称アルビノ、全身が完全に白色、オス・メスは識別できない。
- ファローはシナモンの色調が淡くなったタイプ、ファローとはくすんだ淡い黄色を意味する言葉。
- シルバーはグレーの色調が淡くなって、美しい光沢のある銀灰色になったタイプ、遺伝形式が優性のドミナントシルバー、劣性のレセッシブシルバーがいる。
- イエローフェイスはチークパッチのオレンジ色が濃い黄色になったタイプ、遺伝形式が優性のドミナントイエローフェイス、劣性のレセッシブイエローフェイスがいる。
- パステルフェイスはチークパッチのオレンジ色が淡くなったタイプ、イエローフェイスとの境界が曖昧で、外見で区別するのは困難。