深海。それは僕たち人間が生身では絶対に行くことはできない未知の世界です。深海探査用の潜水艦や探査艇もありますが、現代科学技術の結晶であり、保有している国や団体はほんの少しです。したがって、これだけテクノロジーが発達しているにも関わらず、僕たち人類はまだ海の世界についてまだ3%程しか解明できていないのです。しかし、最近ニュースやドキュメンタリー番組で、深海生物について取り上げられたり、水族館では深海生物専門のコーナーができたりと、今まで全く謎に包まれていた世界が、少しずつですが人目に触れるようになってきました。そんな中、最近よく話題となり、見かけるようになってきたのが、深海に棲む「オオグチボヤ」という生物です。深海生物は基本的に奇妙な姿や、グロテスクな生物が多いのですが、このオオグチボヤも例外ではなく、かなり奇妙です。しかし、この奇妙な生物にも、なぜかファンが存在するようです。そこで今回は、好きになれればかなり可愛い深海のアイドル「オオグチボヤ」について紹介していきます。
深海に棲む変な生物!生態は?

オオグチボヤ(Megalodicopia hians)は、オオグチボヤ科オオグチボヤ属に属する海鞘(ホヤ)の仲間です。
ホヤの仲間であるマボヤは、日本を含むいくつかの国では食用とされていて、日本では関東より東で主に食されています。ただし、このオオグチボヤが美味しいのかはどうかまだ分かっていません。きっとまだ食べた人はいないでしょう。オオグチボヤの名前は、その外見がまるで人が大きな口を開けたような形をしていることから名づけられたようです。富山湾の深海探査では、コロニーを作っていたほぼ全てのオオグチボヤが、入水口を水が流れてくる方向に向けていたそうで、まるでエサを待つチンアナゴのようですね。またそれらの個体たちは、入水口の向きから見た際に、互いに重ならないような配置をとっていたらしく、太陽の光を求めるヒマワリのようですね。なお、刺激を受けると入水口を閉じ、小さく丸くなるようで、ロボットアームで採集しようとした際には、入水口を閉じ、しゃがみ込むような動きを見せたようです。この動作が意外に速く、5秒もかからなかったそうで、まるでダンゴムシみたいですね。
特徴
オオグチボヤの特徴は何と言ってもその外見でしょう。日本では三陸地方が産地として有名なマボヤなどは、南国のドラゴンフルーツのような形と色をしていますが、オオグチボヤはそんな姿とは全く似つかない、奇妙な外見をしています。
生息地

世界中の海の深海域にオオグチボヤは生息していると考えられています。日本近海では、富山湾の深海域700~900mほどの場所で大規模なコロニーが見つかっています。
大きさ
オオグチボヤの本体と思われる部分は球形に近い形で、その大きさは直径50~70mm程度。大きな口を開けているかのような入水口があって、上述したように、そこからエサとなるプランクトンを取り込み、鰓で濾しとって食べています。その下には30~50mmの柄部があり、その下面で硬い基盤に付着しています。その姿はキノコのようにも、タマゴヘビのようにも、有名なゲームに登場する口のある植物のようにも見えます。また、体色が半透明なので、体内の消化器官などが丸見えなのもの、ちょっと不気味ですね。
餌
体色は白く半透明で、他のホヤと同様に大量の海水を大きな口のようなところ(入水口と呼ばれる)から身体に取り込んで、いわゆる鰓を通して海水中のプランクトンを漉しとって食べる動物です。オオグチボヤの消化管内容物を調査したり、水族館での飼育観察の情報によると、海流で流れてきたものが口に入れば、なんでも食べているようで、プランクトンを中心に小型の甲殻類までも食べてしまうようです。
水族館に展示?

深海に棲む神秘的な生物オオグチボヤ。彼らの野生の姿を僕たちが見ることはほとんど不可能ですが、飼育下の個体ならばまだチャンスはあります。なんと、水族館で見られる可能性が高いからです!これまでに、「新江ノ島水族館」「アクアマリンふくしま」「魚津水族館」でオオグチボヤが展示されたことがあるとの情報をゲットしました。こちらは、アクアマリンふくしまで飼育されていたオオグチボヤのネット上の映像です。
ですが、深海生物を長期間飼育することは大変困難で、期間限定の特別展示となっていたようなので、これから皆さんが訪れた際に展示しているかどうかわかりません。それらの生物は、漁師によって偶然捕えられた個体が展示されているようなのです。しかし、日本近海は深海生物の住処となる深海域がすぐ近くにあるため、また展示される日はそう遠くないでしょう!オオグチボヤを水族館で見てみたい!という方は、水族館のホームページなどで、こまめに情報収集してみましょう。
ペットにできる?

深海生物は水圧などの関係上、地上の水槽では長期間生存することができません。そのため、個人でアクアリウムでペットとすることは困難です。また、ペットショップでは販売されておらず、漁の網に偶然かかったときしか入手できません。もし、自宅のアクアリウムにオオグチボヤがいたら、物珍しさで噂になって、たくさんの人が訪れてきてしまいます。
ぬいぐるみがある!?
そして、オオグチボヤのことが気に入った、好きになってしまった方に朗報!なんと、オオグチボヤのぬいぐるみが存在するのです!
【しんかいさん オオグチボヤ ぬいぐるみ】
いったい誰が企画して、どうして商品化しようと思ったのかは謎ですが、事実販売されていることは間違いないです。値段は、税抜き1800円程と高くもなく、安くもないといった値段設定。しかし、部屋に飾れば一気に個性度が上がることは確かです。友人が自分の部屋に訪ねてきて、そのぬいぐるみを見つけたら、必ず話題に挙がることでしょう。ちなみに、このぬいぐるみは、「しんかいさん」ぬいぐるみシリーズの一つで、ダイオウイカや、ダイオウグソクムシなど、他にも深海生物がいろいろぬいぐるみ化されています。インターネットでの通販で購入できるので、深海生物マニアの方はもちろん、普通のぬいぐるみにはちょっと飽きてしまったという方なども是非手に入れてみては?チンアナゴのぬいぐるみも可愛いですよ!
まとめ
- それでは、今回ターゲットにしたオオグチボヤについてまとめてみると、
- オオグチボヤはホヤの一種で、深海(700~900m程)に棲息している
- 日本近海にも棲息していて、富山湾では巨大コロニーが発見されている
- 特徴的な外見で、エサを食べる獲る為の入水口が極めて大きく、その名前の由来となっている
- 日本の水族館の、深海生物を展示しているコーナーで見られる可能性がある
- あまりの可愛さに?ついにぬいぐるみ化され、販売されている
オオグチボヤ以外にも、ユメナマコやコンペイトウなど、深海生物界のアイドルたちはたくさんいます。その姿は、僕たちが普段見かける生物たちとはかなり変わっているものが多く、中にはグロテスクな生き物もいるでしょう。しかし、太陽光から隔離された暗黒の世界で、しかもものすごい水圧下でひっそりと生活する彼らのことを想像すると、なぜか見つめずにはいられなくなります。この先科学技術の発達し、今まで知られていなかった生物たちがどんどん脚光を浴びて、皆さんに紹介できる日が来るのを心待ちにしています。