世界には変わった名前の生物がたくさんいます。みなさん、タコノマクラ(英語ではSea biscuit、漢字では蛸枕あるいは海燕)という名前の生物を知っていますか?名前だけ聞くと、どんな生物なのか、なかなか検討がつかないですよね。今日はそんな珍名を持つ変な生き物、「タコノマクラ」をご紹介しましょう。
どんな生物?特徴と生態

タコノマクラは名前、容姿からはどんな生物なのか全然想像出来ませんが、ウニの仲間です。正確には「棘皮動物門ウニ網タコノマクラ目タコノマクラ科」です。棘皮(きょくひ)動物というのは、ヒトデはウニが分類されます。素人目ではどちらかというとウニというよりはヒトデっぽく見えるかなぁ。同じタコノマクラ目にカシパンも属します。タコノマクラはウニとは思えない形をしています。ウニは球型ですが、それに対してタコノマクラは盾のような平たい円形です。そのうえ、棘が1mm未満と短いです。これがタコノマクラ目の特徴です。カシパン類も同じような形をしています。短い棘は目立ちませんが、殻の表面を覆っていて、砂や貝殻・海藻などのゴミ屑を身体の上に載せて、カモフラージュする習性があります。
大きさ

直径10cm程で、厚さが3cm。タコノマクラの上面中央には、5枚の花びらのような模様があります。似た模様がカシパン類にもあります。この花びらのような模様がとても可愛いですよね。私はダイビングをやるのですが海の中でこの丸っこくて花のような模様の生物を見たら、テンション上がっちゃいそうです。綺麗で可愛い魚も良いですが、タコノマクラは癒し系ですね。
5の秘密
さて、この花びらのような模様ですが、ウニの身体の構造と関係があります。ウニの身体が「5」という数を基本に出来ているからです。ウニの棘をすべて取ってしまうと棘のあった場所が5本の帯のように見えます。タコノマクラの花びら模様も5枚ありますよね。ウニだけでなく、棘皮動物の仲間はみな「5」を基本に出来ています。一番わかりやすいのはヒトデです。ヒトデの身体は星型です。5本の腕がありますよね。
生息地は?

南日本に広く分布していて、房総半島以南、本州、四国、九州沿岸の潮下帯に分布しています。水深は15m~30mの岩礁域付近の砂底や、砂泥底に生息しています。また、形は違ってもウニの仲間であるため吸盤のある菅足を持ち、岩場を這い上がることが出来ます。なんなら、水槽の垂直なガラス壁を這い上がることも出来ます。岩場もすごいですが、ガラス壁まで這い上がれるなんてすごいですねぇ。普段は砂の中に生息し、腐食物や砂泥中にある有機物を食べます。産卵期は7~8月です。
ウニなのになぜ棘が短いの?
ウニと言えばまず棘を思い浮かべますね。タコノマクラはウニの仲間なのに棘が極端に短いことからウニの仲間と分かりづらいです。ではなぜ棘が短いのでしょうか。そこにはちゃんと理由があったのです。前述の通り、タコノマクラは砂の中に潜り生活しています。そのため、砂の中の生活では邪魔になる長い棘を短くするという選択を取ったのです。ではなぜ彼らは身を守るはずの棘を短くしてまで、砂の中に潜るという選択をしたのでしょうか。何だと思いますか?その理由には彼らの天敵にあります。彼らがまだムラサキウニなどと同じように岩や砂の上で生活していたころ、トウカムリという貝の一種に食べられていました。その貝から身を守る方法の一つとして砂に潜るという道を選んだのです。なるほど、身を守るための進化だったのですね。ウニに見えないとか、ヒトデみたいとか文句を言ってごめんよ。彼らは頑張って知恵を働かせ、健気に生きていたのね。そう思うとますます癒し系に見えてきます。
「タコノマクラ」珍名の由来は?
蛸の枕。とても変わった名前ですね。由来は諸説あり、発見された時、タコが枕代わりにするかのようにタコノマクラの上にいたとか、タコが姿を隠すのにタコノマクラを利用したとか、タコが枕にしそうな容姿だったからなどあります。また、「タコノマクラ」という名前は、江戸時代には現在のヒトデやモヒトデの仲間を指す言葉で、明治時代の生物学者が、中等教育の教科書の中で現在のタコノマクラにこの名前を当ててから、呼び方が普及・定着したのだという説もあります。こんなに変わった名前なのに、由来が明確に分からないとは思いませんでした。いずれにしても、つけた人は面白い人ですね。かなりインパクトのある名前を付けてもらい、容姿も変わっているタコノマクラは一度覚えたら忘れられない存在です。同じタコノマクラ目のスカシカシパンの名前が面白いです。スカシカシパンとタコノマクラは似ています。
水族館で見られる?

あわしまマリンパークのふれあい水槽でタコノマクラに会えるようです。見るだけではなく触れ合えるなんて!是非手に取ってみたいですね。また、死んだものは漂白すると殻が真っ白になるのですが、花びら模様が浮き出て綺麗なためコレクションしている方もいるようです。またそれをモチーフにしたアクセサリーなんかも売られています。ダイビングや水族館で生きたものを見るのも良いですし、死んでしまったものの殻を飾るのも良いですね。私は是非ダイビングで健気に生きる彼らを見たいです。
まとめ
タコが枕にしているような生物だからタコノマクラというネーミングでした。手のひらに乗る大きさで、ちょっと、どら焼きのような形にも見えました。ウニの仲間ですけど、棘は短かったです。ぜひ海水浴などにいったら、海岸で探してみましょう。