少し前に、「ダイオウグソクムシ」という深海生物が話題となりましたね。なんでも、捕食することが極端に少ないとかです。深海生物にはたくさんの変わった不思議生物がたくさんいます。今日はそんな中から、「ユメナマコ」(英語ではEnypniastes eximia、漢字では夢海鼠)というキュートな名前の持ち主の深海に住むお洒落なナマコの一つをご紹介しましょう。
どんな生物?生態と特徴

ナマコは通常、海の底を這って移動しますが、このユメナマコは違います。なんと、泳ぐのです。初めて見つけた人はまさかこれがナマコだとは思わなかったことでしょう。
子どもの頃はピンク色ですが、成長して大人になるにつれ濃いワインレッドに成長します。ピンクとワインレッド、まさに子どもと大人ですね。ユメナマコはお洒落さんなんだなぁ。
生息地。
深さ300~6000mで暮らし、たてがみのようなヒレを動かしてふわふわ立ち泳ぎをします。ナマコが立ち泳ぎとは。とても驚きますね。
色の秘密は?
そして、赤い半透明の姿は暗い海中では闇に紛れ、敵に見つかりにくくなっています。そういうことか〜。深海魚はなぜ透明なものが多いのかと思っていましたが、敵から見つかりにくくするためだったのですね。みんな生きていくために色々な工夫をしますね。
ある生物にとってとても重要な存在。
2008年、ユメナマコの表面にはクラゲの「ポリプ」など小さな生物が住み着いていることが分かりました。ユメナマコが泳げば、海中のプランクトンなどを食べているポリプたちは食事のチャンスが増えます。ユメナマコは小さな生き物に食事付きの住処を提供しています。透明な体は優しさで出来ているのですねー。でも、住まわせることでユメナマコにメリットはあるのでしょうか?あるといいですけどね。もしかして、発光する?!
お洒落なユメナマコ。お洒落は体の色だけではなかった!?
ユメナマコは外皮に無数の発光器が散在しており、これは強い刺激によって発光します。体がピンクな上光るなんて、海の中で見たら綺麗でしょうね。また、外皮は非常に弱く少しの刺激でも剥げ落ちます。つまり、外的から攻撃を受けた際には、脱落した外皮が発光しながら漂うことになります。これは捕食者を惑わす効果があると考えられています。コウモリダコやウミサボテンも発光します。
皮膚が再生!?
さらに、脱落した外皮は急速に再生します。なるほど。暗闇の中でなぜ光ってしまうのかと思っていたんですよね。だって、めちゃくちゃ目立っちゃって、食べられちゃうんじゃないかと。その部分を落としてしまうとはすごいですね。深海の暗闇をとても上手に利用していますね。そして綺麗な体の色に発光器までついているなんて、光った際には綺麗でしょうね。すぐ落ちてしまうのであればなかなかその姿を見ることは難しいかもしれませんが。あー、深海生物だからたまたま採集された時にしか展示されていないんですね〜。
大きさ

ユメナマコの大きさは数十cm程で、最大でも25cm程度です。Mサイズのピザの直径くらいの長さです。
体はどうなってるの?
くるりと回る管は胃や腸で、その上が口です。
餌は?
食事のときには海底に降りて、泥の中の微生物などを泥ごと餌として食べます。食事は最大でも1分ほどしかかからず、すぐに海底から離れます。食事時間が1分なんてものすごい早食いですね。そんな早食いしたら消化不良を起こしそうなところだけど…。ユメナマコは大丈夫だそうです。
長い腸の持ち主?
魚などを食べる肉食動物に比べ、長い腸を持ちます。これは魚などより栄養分の少ない泥などをユメナマコが食べるためです。腸が長いと、食べたものが腸内にとどまる時間が長くなります。消化しづらいものもゆっくりと消化して、泥の中にある栄養分を出来る限り吸収します。早食いも食べるものも、この長い腸のおかげできちんと消化・吸収されるわけですね。
ちなみにこちらが食べているところのネット上の動画です。可愛いので見てみてください。
ペットにできる?
先ほども述べた通り、深海探査艇が偶然に発見して、採取したときしか、ユメナマコを入手できません。それで、もし採取しても水族館や大学などの研究機関に運ばれます。そのため、個人で入手して水槽に入れてペットとすることはほぼ不可能です。どうしても、この可愛いユメナマコを飼いたいという方は、通販などでは、ぬいぐるみが販売されているので、それで我慢しましょう。
水族館で見れるの?
沼津港深海水族館にはユメナマコの絵が飾ってあります。水族館でも見たいなーと思って調べているとこんな記事が!
深海から採集されたナマコの仲間「ユメナマコ」(体長約二十センチ)が二十一日、藤沢市片瀬海岸の新江ノ島水族館にお目見えした。生きた状態で展示されるのは極めて珍しいといい、傷を負っているため展示は数日間限りになりそうという。今月十五日、海洋研究開発機構(横須賀市)の有人潜水調査船「しんかい6500」が、岩手県宮古市沖の水深五、三五一メートルで採集。この深さの生体が展示されることも、例がないのでは、という。
いつか見れることを期待しましょう!
2018年8月には葛西臨海水族園で飼育していたこともありました。
まとめ
ナマコって海に落ちている胡瓜でしかなかったのですが、こんなにお洒落なナマコもいたんだなと驚きました。見方によってはグロテスクですが、深海生物って不思議なもので、私は見れば見るほど、その珍しい姿からかどんどん虜になっていっちゃうんですよね。ユメナマコも最初は、「えっ!?これはちょっと素敵と思えないかも。。。」と思いました。しかし、見ていくうちに、海に咲くお花のような。それも少し艶やかで、美しくさえ見えてきます。深海は宇宙より謎だと言われているそうです。これから技術の進歩でもっとたくさんの不思議生物が見つかることでしょう。とても楽しみですね。